「誰かの笑顔が見たい」——その想いを軸にキャリアを歩んできた矢澤佑紀子。

リクルートでの営業経験を皮切りに、創業メンバーとして飲食店の立ち上げを経験し、オンライン秘書サービス「nene」を創業。現在は業務の可視化や整理を軸に、業務マニュアルの作成やAI導入支援など、企業の基盤を見直し、課題解決を支える存在として株式会社mayclassを率いる。

これまで一貫して、人や組織を支える“縁の下の力持ち”として挑戦を続けている矢澤だが、その原点はどこにあるのか。

彼女がこれまで歩んできたキャリアの軌跡と、そこに通底する経営スタイル、そして未来に描くビジョンを語ってもらった。

株式会社mayclass代表取締役・矢澤佑紀子。2014年にリクルートスタッフィングへ入社し、営業職としてキャリアをスタート。2017年に飲食ベンチャー企業の立ち上げに参画し、バックオフィス業務や複数店舗のマネジメントを担う。2018年、オンライン秘書サービス「nene」をメインサービスとする会社を共同創業し、2020年に売却。その後、マニュアル制作事業を手がける会社でCOOを務め、2025年にmayclassを設立。業務改善やAI支援、タスク管理ツールの販売を通じて企業の成長を支える。2歳の息子と夫、三毛猫「サスケ(女の子)」と暮らしている。

人材派遣、飲食、オンライン秘書。幼少期から続く“誰かの笑顔を見たい”がキャリアの原点に

—— 矢澤さんのこれまでのキャリアについて教えてください。

2014年に新卒でリクルートスタッフィングに入社し、埼玉県や神奈川県エリアを中心に人材派遣の営業を担当しました。

その後、知り合いが立ち上げた飲食系のベンチャー企業に創業メンバーとして参画。最初はバックオフィス業務を任されていたのですが、次第に営業や店舗マネジメント、複数店舗のエリア統括まで幅広く担うようになり、創業期ならではの“なんでもやる”環境にもまれながら過ごしました

そして、2018年にはオンライン秘書サービス「nene」を立ち上げ、約1年間運営したのち、2020年に売却。その後、マニュアル制作事業を手がける会社でCOOを務め、2025年1月に株式会社mayclassを設立しました。現在は業務マニュアルの作成やAI導入支援などを通じ、企業の基盤の見直しや課題解決を支えています。

—— 異なる業界・業種を渡り歩いていますが、そのなかで一貫して大切にしてきたものはありますか。

「人と関わる」ことが軸ですね。リクルート時代の営業も飲食での店舗運営も、そしてオンライン秘書サービスも、すべて“人が人を支える”の仕事です。人にしかできない価値を届ける。そこは、自分が自然と選び続けてきた軸だと思います。

—— 「人と関わる」に、矢澤さんの強い想いを感じます。

幼少期から「人と関わる」ことに興味がありましたね。実家がお寺だったこともあって、幼い頃から大人に囲まれて育ちました。親戚やお檀家さんが常に出入りしていて、大人に囲まれる環境が当たり前だったんです。

そんな環境のなか、私はとにかくやんちゃな女の子で(笑)。柱に登って飛び降りるような遊びをよくしていたのですが、周囲のみんなも笑って見てくれていました。でも、その“やんちゃさ”は「自分がアクティブに遊びたい」というよりも、「アクティブな自分をみて誰かが喜んでくれる」のが楽しくてやっていたんです。

これ、私にとっては大きな成功体験でして。「人と関わり、誰かの笑顔を見たい」という感覚が芽生え、その想いが、自然とキャリアの選択につながっていきました。

オンライン秘書サービス「nene」創業から学んだ、組織づくりの大切さ

—— 「nene」創業は、どのようにはじまったのでしょうか。

飲食の現場で出会った経営者の方々から「秘書をやってほしい」と声をかけていただいたのが始まりでした。会食後の2次会の手配や、タクシー・ホテルの予約といった細かな業務をオンラインで代行するうちに、「ニーズもあるし、事業になるかもしれない」と考えたんです。

大学時代から漠然と「いつか起業したい」という思いはあり、仲間の後押しもあって「nene」を共同創業しました。サービス名には、豊臣秀吉の妻・寧々のように「縁の下で支える存在でありたい」という想いを込めました。

—— 振り返ってみて、印象に残っていることはありますか。

「nene」を始めた直後から想像以上の反響があったのは、特に印象に残っています。当時はオンライン秘書サービスが徐々に世の中に広がり始め、注目が高まりつつあった時期でした。その流れのなかで「nene」をリリースできたことが、話題性につながったのかなと思います。

SNSでは、実際に利用された経営者の方々が「neneちゃんに頼んだ」と親しみを込めてご紹介してくださって。やり取りのスクリーンショットが拡散されることもありました。自分たちが立ち上げたサービスが役に立っていると実感できた瞬間は嬉しかったです。「期待を裏切りたくない」という思いが強まり、事業を続ける大きな原動力にもなりましたね。

—— 初めての事業の第一歩で、大きな成果を残されたのですね。

はい、しかし一方で、後悔もあります。それは、「組織づくりをやり切れなかった」ことです。当時は東京で営業、宮崎で秘書スタッフの採用・育成する体制をとっており、全社で20人弱のメンバーが在籍していました。

東京で営業活動をしながら、定期的に宮崎にも行っていましたが、毎日顔を合わせることはできず、コミュニケーションが不足している部分がありました。結果として、メンバー一人ひとりの悩みや不安に十分に向き合えないまま、売却を迎えてしまったんです。組織づくりを途中で手放したことは、今も大きな反省として心に残っています。

—— 「nene」での心残りが、mayclass設立に強く結びついていそうですね。

すごく大きな学びになっています。だからこそ「次こそは、しっかり組織をつくりたい」と思いました。それに、一緒に頑張ってきた仲間と離れ離れになるのは悔しいという気持ちも強かったですね。その思いが、今のmayclass設立につながっています。

仲間がいたから、覚悟が決まった。mayclass創設の想い

—— いろいろな経験を経て、2025年1月に新しく株式会社mayclassを設立されましたね。

「nene」での後悔を経て、「次こそは組織をしっかりつくりたい」という思いが強くありました。また、mayclassを起業する時に、それまで一緒に働いていた仲間たちが「一緒にまた働きたい」と手を挙げてくれたんです。

起業するだけなら、いつでも誰でもできると思っています。でも、「どれだけ覚悟を持って起業するか」が私には重要で。登記した後に、実際にメンバーがついてきてくれた瞬間、「次は必ず成功させたい」という覚悟が腹の底から決まった感覚がありました。

—— 会社名「mayclass」には、どのような意味が込められているのでしょうか。

「つくる」や「創造する」という意味をもつ「make」と、「素晴らしい」という意味をもつ「class」を合わせて、“素晴らしいを創る”という意味を込めています。

さらに、「make」を「may」にしたのも意味があって。「May I〜?」というニュアンスを加えることで、「謙虚に相手に寄り添う姿勢」を表現しました。どんな立場にあっても、対等に寄り添いながら一緒に進んでいく。そんなカルチャーを大切にしたいと思っています。

—— 創設後、実際にチームで働いてみて、どんなことを実感されていますか。

起業してよかったと強く感じるのは、「仲間と一緒に成果を喜べること」です。

私が営業した案件に対して、丁寧にお客様と向き合ってくれる秘書チーム、成果物として形にしてくれるライティングチーム、そしてバックオフィスをサポートしてくれる仲間がいる。成果をチーム全体で取りにいく仕組みが、創業初期の段階でできあがっていることに心から感謝しています。

それに、私は正直なところ抜け漏れが多いタイプなんです(笑)。でも、何も言わずとも「ここは私がやります」と自然にフォローしてくれるメンバーの配慮があるから、自分の得意分野に集中できる。役割分担がしっかり機能している今のチームには、日々助けられています。

もちろん大変なこともありますが、みんなで同じ方向を見て挑戦している一体感が心地よくて。どこか部活のような、ちょっと青春っぽい感覚がありますね。

—— 楽しそうなのが伝わってきます!今後、入社される方もいると思いますが、働く環境を整えていくにあたり、意識していることは何でしょうか。

誰もが「この環境で働けてよかった」と思える会社が目標です。実際、今のメンバーにも、子育てをしている人や独身の人、介護を担っている人など、さまざまなライフステージの人がいます。それぞれが自分の状況に合わせて柔軟に働けていて、前向きに仕事と生活を両立できていると感じています。

だからこそ、「こうすれば効率的になる」「こうすれば両立しやすい」と考えられる人と一緒に、より良い形を模索していきたいですね。働く環境や家庭のあり方は、自分自身でもつくっていけるもの。ライフスタイルを大切にしながら主体的に環境を築いていける方に、ぜひ仲間になってもらえたら嬉しいです。

変化を楽しみ、仲間と共に“自分らしい働き方”を築く

—— 今後、mayclassをどんな会社にしていきたいですか。

私、何事にもゴールを設定するタイプなんですが、 mayclassについては「こうしていきたい」と明確なゴールを決めていないんです。むしろ、変化していく状況に合わせて柔軟に形を変えていける会社でありたいと思っていて。

この時代、何が正解かは誰にもわからないじゃないですか。だからこそ、ゴールを固定するのではなく、流れに身を委ねながら、その瞬間にとってベストな選択を続けていける。そのうえで、臨機応変に対応できる強固な組織にしたいです。

—— 最後に、お客様やこの記事を読んでくださる方々へ、メッセージをお願いします。

事業は、クライアントや周囲の方々の支えがあって初めて成り立つものだと実感しています。特に立ち上げ初期に手を差し伸べてくださった方々には、感謝しかありません。いつかもっと大きな形で恩返しできたらいいなと思っています。

mayclassは、まだ立ち上げ期にある会社です。だからこそ、一緒に会社をつくっていけるおもしろさがあると思います。今の環境を変えたい、自分らしいライフスタイルを大切にしたい、そんな思いを持つ方と歩んでいけたら嬉しいです。