近年は、業務の属人化を防ぎ、誰もが同じ手順で仕事を進められるようにするために、マニュアルの整備が重視されています。とはいえ、実際には「マニュアルが作れない」「苦手意識がある」と感じている人は少なくありません。その背景には、手順や構成のイメージがつかめないまま書き始めてしまったり、情報をどう整理すればよいか分からなかったり、あるいは最初から完璧なものを作ろうとして筆が止まってしまう、といった要因があるようです。

しかし、マニュアル作成は特別なスキルが必要な作業ではありません。必要なのは、正しい手順と、整理のためのちょっとした考え方、そして手助けとなる便利なツールやテンプレートです。

本記事では、マニュアルが作れないという悩みを持っている方に向けて、初心者でも迷わず進められる基本の流れと、すぐに使える無料ツール、さらに失敗しないためのポイントをわかりやすくご紹介します。マニュアル作成のハードルを下げ、マニュアルが「上手に作れる」人を目指しましょう!

マニュアルが作れない・苦手な人の共通点とつまずき

マニュアル作成が苦手だと感じる人には、いくつか共通する傾向があります。「何を書けばいいかわからない」「途中まで作ったけれど、うまくまとまらず放置してしまった」といった経験は、多くの人が一度は通る道です。

特に多いのが、「作り方がわからない」「どこから手をつければいいのか迷ってしまう」といった“入り口の段階”でつまずくケースです。目的も構成も曖昧なまま作成を始めてしまうと、情報があちこちに散らばって収拾がつかなくなり、結果的に未完成のまま放置されることになります。

また、昔ながらの紙マニュアルの書き方に慣れている人ほど、見た目やレイアウトにこだわりすぎてしまう傾向があります。その結果、「中身の整理より、どう見せるか」に意識が向いてしまい、本来伝えるべき内容がぼやけてしまうのです。

さらに、「情報をうまく整理できない」「書いているうちに話があちこちに飛んでしまう」といった声もよく聞かれます。これは構成を考えずに書き始めてしまうことが主な原因です。文章力の問題ではなく、構成設計の段階で迷子になっているケースがほとんどです。

このように、マニュアルが作れない理由は「能力不足」ではなく、「やり方を知らない」「順序を間違えている」といった問題にすぎません。次章では、初心者でも迷わず進められる正しい手順と、つまずかないためのコツをご紹介します。

初心者でも簡単!マニュアル作成の正しい手順とコツ

マニュアルが作れないと悩んでしまう人の多くは、正しい順序を知らずに、いきなり本文を書き始めてしまうことで手が止まってしまいます。ここでは、初心者でも迷わず取り組めるマニュアル作成の基本ステップを4つの段階に分けて解説します。

マニュアル作成手順①|対象読者と目的を明確にする

最初に行うべきは、「誰が読むのか」「どんな場面で使うのか」「どんな成果を得たいのか」をはっきりさせることです。

例えば、「新人スタッフが業務を覚えるためのマニュアル」なのか、「ベテランでも忘れがちな手順を確認するチェックリスト」なのかによって、内容の深さや説明の丁寧さはまったく異なります。

読み手と目的が明確になることで、「どこまで説明すべきか」「何を省略できるか」が判断しやすくなり、無駄のない構成につながります。

マニュアル作成手順②|業務内容を分解する(業務分解図の活用)

次に、マニュアル化したい業務を「小さな単位に分解」して、全体像を整理します。いきなり一連の流れを文章にしようとすると混乱しやすいため、まずは手書きでもExcelでもいいので、業務を一つひとつの作業に分けて洗い出してみましょう。

このときに便利なのが、業務分解図(タスク分解ツール)です。
業務を「準備」「作業」「確認」「報告」などの工程ごとに整理することで、マニュアルにすべき箇所や、逆にマニュアル化不要な箇所も見えてきます。

マニュアル作成手順③|構成をテンプレートで設計する

業務の流れが整理できたら、それをマニュアルとしてどの順序・形式で伝えるかを考えます。このとき、「ゼロから考える」のではなく、既存のテンプレートを使うのが効果的です。例えば、「目的 → 手順 → 注意点」のような基本構造をベースにすると、抜け漏れや順序の混乱を防ぎやすくなります。

テンプレートはインターネット上で多数公開されており、無料で使えるものも豊富です。「操作マニュアル」「引継ぎマニュアル」「業務マニュアル」など、用途に合わせて活用することで、構成に迷わず進められます。

マニュアル作成手順④|内容を図・表・動画で視覚化する

マニュアルの内容は、文章だけに頼らず、視覚的な要素をうまく取り入れることで、理解しやすくなります。

  • 操作説明にはスクリーンショットを挿入する
  • 複雑な手順はフローチャートや図解で見せる
  • 実作業の様子は動画で撮影して補足する

このように、文字以外の要素を活用することで、読み手がつまずきやすい部分を直感的に理解できるようになるため、マニュアルの実用性が大きく向上します。

以上の4ステップを押さえておけば、マニュアル作成は「何となく難しそうな作業」ではなく、手順通りに進めれば完成できる業務プロセスへと変わります。

無料で使える!マニュアル作成に便利なおすすめツール&テンプレート

マニュアル作成をスムーズに進めるには、「どのツールを使うか」も大切な要素です。特に初心者にとっては、操作が簡単で、すぐに使える無料ツールやテンプレートを上手に活用することで、負担を大幅に軽減できます。

ここでは、目的別におすすめの無料ツールとテンプレートをご紹介します。

カテゴリツール名特徴用途
文章・構成向けGoogleドキュメントシンプルなUI、クラウド共有・共同編集に強い。チーム向けテキスト中心の業務マニュアル・手順書
Notion柔軟な構成とブロック編集。テンプレートが豊富ナレッジベース型マニュアル、社内Wiki
図解・ビジュアル重視Canva直感的な操作と豊富なテンプレート。図やアイコンの挿入が簡単ビジュアル資料、操作手順の図解
Lucidchart業務フローやフローチャートの作成に特化プロセスマップ、業務フロー図
業務分解図ツール業務の構成整理に有効。可視化しやすい業務の棚卸し、構成設計の補助
動画マニュアル作成Loom画面収録+音声ナレーションが簡単に録画可能操作マニュアル、システム説明動画
Tebiki現場作業向けの動画マニュアル作成。無料トライアルあり現場作業、製造工程の教育用動画

【初心者向け】文章・構成に強い無料ツール

Googleドキュメントは、シンプルなインターフェースとクラウド共有のしやすさが特長です。業務マニュアルや手順書など、テキスト中心のマニュアルに適しています。複数人での同時編集やコメント機能もあるため、チームで作成・改善する際にも便利です。

参考:Googleドキュメントでマニュアルを作成・共有する方法!効率化のコツとおすすめツールを徹底解説

Notionは、マニュアルをナレッジベースとして蓄積したいときに役立つツールです。テキスト、画像、表、チェックリストなどをブロック単位で自由に配置でき、視覚的にも整理された構成が作れます。テンプレートも豊富に用意されています。

参考:Notionでマニュアルを作成する方法!テンプレート活用・データベース連携完全ガイド

【図解・ビジュアル重視】見せて伝えるツール

Canvaは、図やアイコン、テンプレートが豊富なデザインツールで、視覚的にわかりやすいマニュアルを作成したいときに最適です。操作も直感的で、PowerPoint感覚で使えます。

Lucidchartは、フローチャートやプロセスマップなどを作るのに特化したツールです。複雑な業務フローを図で見せたいときに重宝します。

業務分解図ツールも、マニュアル作成の構成設計に役立ちます。業務全体を見える化することで、どの部分をマニュアルに落とし込むべきかを明確にできます。
業務分解図はこちら

【動画マニュアル作成】実演・操作説明に便利なツール

Loomは、画面収録と音声ナレーションがセットで簡単に録画できるツールです。ソフトの使い方や操作説明を動画で見せたい場合に最適です。

Tebiki(テビキ)は、現場作業や製造工程など、実際の作業を撮影して教育用動画にまとめるのに適しています。無料トライアルがあるため、まずはお試しで活用してみると良いでしょう。

【テンプレート活用術】構成に迷ったときの頼れる土台

「マニュアルを書き始めたいけど、どう構成していいかわからない」「文章を書くのが苦手」そんなときこそ役立つのがマニュアル用のテンプレートです。

テンプレートを活用すれば、構成を一から考える必要はありません。あらかじめ決まった「型」に沿って情報を埋めていくだけで、自然と整理されたマニュアルが完成します。

テンプレート名想定用途主な構成内容の例
業務マニュアルテンプレート日次業務・定型作業の標準化目的/業務の概要/手順一覧/注意点/関連資料
操作手順書テンプレートシステム・ツール操作の解説操作対象/画面キャプチャ/ステップごとの説明/トラブル時の対応法
引継ぎマニュアルテンプレート業務の担当変更・退職時の引継ぎ業務の目的/対応範囲/使用ツール/関係者/引継ぎメモ/連絡先など
トラブル対応テンプレート顧客対応・緊急時対応の手順共有トラブル概要/発生時のフロー/連絡先/報告書テンプレート/Q&A

社内で共有されている過去資料を参考にするのも、テンプレートとしての活用法のひとつです。初心者にとって重要なのは、「自分で一から作ろうとしない」ことです。ツールとテンプレートを賢く使えば、経験がなくても完成度の高いマニュアルが作れます。

「マニュアルを作れない」から「上手に作れる」人になる3つのマインド転換

マニュアル作成は、スキルや経験だけでなく、「どう取り組むか」というマインドセットによっても成果が大きく変わります。特に「苦手」「自信がない」と感じている人ほど、次の3つの考え方に切り替えることで、一歩前に進みやすくなります。

1. 完璧を目指さない:まずは60点でOK

マニュアル作成に時間がかかる原因の多くは、「最初から完璧なものを作ろう」としてしまうことです。文章を何度も修正したり、構成に迷ったりして、結果的に手が止まってしまいます。

ですが、マニュアルは最初から完成品である必要はありません。むしろ、「最低限使えるもの」を早めに公開して、実際に使ってもらいながら改良していくほうが、現場に合ったものに仕上がります。

まずは60点で構わない。使いながら磨き上げていく、という柔軟な姿勢が、継続的な改善と成果につながります。

2. 書くより「組み立てる」発想が重要

「文章を書くのが苦手」と感じる人は多いですが、マニュアル作成の本質は文章力ではなく、構成力です。情報をどう並べるか、どの順序で伝えるかが整理されていれば、難しい言葉や表現力はそれほど重要ではありません。

そこでおすすめなのが、「書く」ではなく「組み立てる」という意識です。テンプレートを活用し、業務分解図でタスクを分けて、それらを順番に当てはめていく。これだけで自然と伝わるマニュアルになります。

苦手意識を克服するには、「上手に書こうとする」のではなく、「正しく並べることに集中する」ことが効果的です。

3. 1人で悩まず、チームでフィードバックを回す

マニュアル作成をすべて一人で抱えてしまうと、迷いが深くなり、手も止まりがちです。自分の中だけで完成度を高めようとするのではなく、途中でも他の人に見せて、意見をもらうことで精度は自然に上がっていきます。

特に、実際にマニュアルを使う人からのフィードバックは非常に重要です。「どこでつまずいたか」「何がわかりづらかったか」といったリアルな声を反映することで、机上の理想ではなく、現場で使えるマニュアルになります。

完璧なものを1人で仕上げようとするよりも、不完全でも早く共有し、対話を重ねて完成度を上げていくほうが、結果的に質もスピードも高まります。

マニュアル作成は、方法さえ間違えなければ、誰にでもできる作業です。大切なのは、苦手意識を手放し、「まずやってみる」「チームで磨く」姿勢を持つことです。

マニュアルを作れない人がやるべき最初の一歩とは?

ここまでの章で、マニュアルを作るための手順・ツール・考え方を紹介してきましたが、「それでもまだ不安がある」「どこから始めたらいいか決められない」という方もいるかもしれません。

そんな方にこそ伝えたいのは、最初の一歩は小さくていいということです。大切なのは、行動を始めること。ここでは、マニュアル作成初心者が「まず何をすべきか」を、具体的な3つのステップにまとめてご紹介します。

テンプレートを使って「真似る」から始める

白紙からマニュアルを作ろうとすると、ほぼ確実に手が止まります。そこで最初は、「テンプレートをもとに、見よう見まねで作ってみる」ことから始めてみましょう。

すでにある構成を真似て、必要な情報を埋めていくだけでも、実務で十分に使えるマニュアルになります。ゼロから完璧を目指すより、まずは**“完成する経験”を重ねること**が何よりも大切です。

業務分解図を使って頭を整理する

マニュアル作成につまずく人の多くは、「どの業務をどう書けばいいか」が整理できていません。そんなときは、まず業務を一つずつ書き出し、工程ごとに分けてみましょう。

業務分解図を使えば、どこから手をつけるべきかが明確になり、マニュアルの構成も自然と見えてきます。頭の中を整理してから書き始めることが、効率的なスタートになります。

小さな業務からマニュアル化して「成功体験」を得る

はじめから大きな業務や複雑なプロセスをマニュアルにしようとすると、挫折しやすくなります。まずは「出張申請の手順」や「備品発注の方法」など、小さくて完結した業務をテーマにしてみましょう。

スモールスタートで1本でも完成させると、「自分にもできた」という手応えが生まれ、自信につながります。こうした小さな成功体験が、マニュアル作成に対する苦手意識を払拭してくれます。

マニュアルづくりは、一度完成させる経験を持つと、次からは驚くほどスムーズになります。テンプレートや分解図などをうまく使いながら、まずは「やってみる」ことが、マニュアル作成への第一歩です。

マニュアルが作れないのは才能ではなく「方法」

「マニュアルを作れない」「自分には無理かもしれない」。そう感じている方の多くは、適切な手順や道具を知らないだけです。マニュアル作成に必要なのは、特別なスキルや文才ではなく、正しい進め方と考え方、そしてちょっとした工夫です。この記事では、初心者でもマニュアルが作れるようになるための具体的な手順や、無料で使える便利なツール・テンプレートをご紹介してきました。

「完璧を目指さなくていい」「小さく始めればいい」という視点を持つことで、これまでの苦手意識もきっと和らぐはずです。まずは、テンプレートを使ってひとつ作ってみる。業務分解図を使って頭の中を整理する。ほんの小さな一歩でも、「自分にもできた」という実感が、次の行動につながります。

マニュアルは、一度作り方をつかめば、誰でも作れるようになります。今日がその第一歩となるよう、ぜひ本記事で紹介した方法を活用してみてください。

マニュアル作成はmayclassにお任せ

マニュアルの作成には、計画・構成・デザイン・更新といった複数の工程が必要であり、手間も時間もかかります。実際、「作りかけで止まっている」「中途半端に作ったけど使われていない」といった声も少なくありません。社内で完結させようとすると、他業務との兼ね合いでどうしても後回しになってしまいがちです。そういった場合は、マニュアル作成のプロに依頼するのも有効な手段です。

mayclassでは、実績のあるマニュアル制作のプロが企業ごとの業務内容を丁寧にヒアリングし、実務に即した分かりやすいマニュアルを提供しています。重要な業務を優先的にマニュアル化し、早期の業務改善を図るだけでなく、視覚的にも整理されたデザインで、誰でも迷わず使える資料に仕上げます。マニュアルは作って終わりではなく、使われて初めて意味を持ちます。マニュアルで属人化の解消、教育コストの削減、業務の標準化といった課題の解決を目指すなら、mayclassへの問い合わせをぜひ一度ご検討ください。

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