店舗が増えるにつれ、「店長によって新人への教え方が違う」「本部が決めた販促が店舗によってうまく回らない」といった課題が出てきます。そこで整理したいのが、本部でまとめて決めることと、店舗で判断することの分担です。
チェーンストア理論は、この分担を考えるための多店舗経営の考え方です。この記事では、チェーンオペレーションとストアオペレーションの違いを販促の例で解説し、店舗業務を標準化する手順を紹介します。
チェーンストア理論とは?多店舗経営を支える考え方
チェーンストアとは?スーパーやドラッグストアを例に解説
チェーンストアの身近な例には、スーパーマーケットやドラッグストアがあります。たとえば、食品スーパーでは本部が共通商品の仕入れ条件をまとめ、店舗が納品された商品を売場に並べます。ドラッグストアでは、本部が販促の時期や売場の基本を示し、各店が自店の売場に合わせて陳列します。
日本チェーンストア協会の資料では、同一資本で11店舗以上を直接運営する形態を「チェーンストア」と定義しています。一方、日本ボランタリーチェーン協会は、チェーンオペレーションを、同一資本の企業型と、資本が異なる契約型に分けています。この記事では、多店舗運営に共通する本部と店舗の役割分担に焦点を当てます。
チェーンストア理論の基本は、本部と店舗の役割分担

チェーンストア理論では、本部が仕入れや販売方針などの共通部分を担い、店舗が接客や売場の管理など、日々の営業を担います。たとえば、複数店で扱う商品の仕入れをまとめれば、取引条件を店舗ごとに交渉する手間を減らせます。新人研修でも、共通する内容を本部で教材にすれば、各店はその教材を使いながら現場での指導に時間を使えます。
チェーンストア理論が目指すのは、各地域で買い物しやすい環境をつくること
チェーンストア理論には、複数の店舗で仕入れや販売の仕組みを共有し、生活に必要な商品を各地域で手に取りやすくするという考え方があります。企業にとっては仕入れや運営を効率化でき、利用者にとっては、普段と違う店舗でも必要な商品を見つけやすくなるというメリットがあります。
たとえば食品スーパーなら、牛乳や卵などの日常的に購入する商品を共通の品ぞろえにしつつ、地域の需要に合わせて地元の商品を加える方法があります。全店で何をそろえるかは、お客様がどの店舗でも何を期待できるようにしたいかを起点に考えると整理しやすくなります。
チェーンオペレーションとは?本部と店舗の役割を具体例で解説
チェーンオペレーションとは、本部と複数の店舗が連携して、チェーン全体を運営する仕組みです。本部が店舗から情報を集め、仕入れや販売の方針を立て、店舗が実行します。実施結果を本部に戻すことで、次の施策に生かせます。
本部は全店の方針を決め、店舗の実績をもとに見直す
たとえば、食品スーパーが全店で季節商品の販促を行う場合、本部は実施期間、対象商品、価格表示や陳列の基準を決めます。店舗は基準に沿って販促を実施し、販売数や欠品した時間帯、売場で起きた問題を本部に報告します。
本部は報告を受け、売れ行きが良くて欠品したのか、納品が遅れたのかなど、店舗ごとの事情を確認します。その結果を、次回の配荷量や納品スケジュールの見直しに使います。
ストアオペレーションとは?店舗で行う日々の業務
ストアオペレーションとは、各店舗で日々行う業務のことです。開店準備、品出し、接客、レジ対応、清掃、閉店作業などが含まれます。
先ほどの販促では、商品を並べる、値札を確認する、売場の在庫が減ったら補充する、欠品を報告するといった作業がストアオペレーションです。手順を整える際は、「誰が、いつ確認し、問題があれば誰に伝えるか」まで決めておくと、担当者が交代しても対応しやすくなります。
チェーンストア理論・チェーンオペレーション・ストアオペレーションの違い
| 用語 | 何を指すか | 販促での具体例 |
|---|---|---|
| チェーンストア理論 | 多店舗経営の考え方 | 複数店で共通化できる販促企画を本部に集約する |
| チェーンオペレーション | 本部と店舗が連携してチェーン全体を運営する仕組み | 本部が企画し、各店が実施し、結果を本部が集約する |
| ストアオペレーション | 個々の店舗で行う日々の業務 | 商品を陳列・補充し、欠品を報告する |
チェーンストア理論のサンエス主義とは?標準化・単純化・徹底化

株式会社テスクの解説では、チェーンストア経営の「サンエス主義」として、標準化・単純化・徹底化の3つを挙げています。店舗の環境整備で使う「整理・整頓・清掃」の3Sとは、指している内容が異なります。
たとえば、開店準備のやり方を全店で整えるときは、次のように当てはめられます。
| 考え方 | 開店準備での具体例 |
|---|---|
| 標準化 | レジの起動や入口の安全確認など、全店で開店前に終える項目と完了基準をそろえる |
| 単純化 | 担当者と店長が別々の用紙に記録している場合は、同じチェック表で完了状況を確認できるようにする |
| 徹底化 | 新人にもチェック表の使い方を教え、確認漏れが起きた項目は、手順や担当の割り振りを見直す |
全店共通のチェック表を配布した後は、実際のシフトで使えるかを確かめます。確認漏れが続く項目があれば、たとえば「担当者が決まっていない」「開店直前に作業が集中している」など、手順どおりに進めにくい理由を店舗に聞き取りましょう。
チェーンオペレーションのメリットと、標準化するときの注意点
仕入れ・教育・サービス品質を全店でそろえやすくなる
共通商品の仕入れを本部にまとめると、発注量を集約して取引条件を検討しやすくなります。また、レジ操作や衛生管理の手順を共通化すると、新人が覚える内容をそろえやすくなります。返品を受け付ける条件や責任者に相談する基準を共通にすれば、同じ状況で店舗ごとに異なる案内をする場面も減らせます。
全店で守る基準と、店舗で調整できる範囲を分ける
売場の広さや来店客の動線は店舗によって違います。たとえば、販促期間や価格表示のルールは全店でそろえ、商品の陳列位置は店舗が決める運用が考えられます。指定の什器が置けない場合に店長の判断で代替できるのか、本部へ相談するのかまで決めておくと、現場が動きやすくなります。
本部に業務を集約するなら、問い合わせや承認の流れも整える
各店で行っていた業務を本部にまとめると、店舗ごとの重複作業を減らせます。その一方で、問い合わせや承認依頼まで本部に集中すると、店舗が回答を待つ時間が長くなることがあります。
たとえば、販促期間中に指定商品が欠品するたびに本部の承認を待つ運用では、売場をすぐに立て直せません。「本部が用意した代替候補から選ぶ場合は店長判断」「販促対象や価格を変更する場合は本部に確認」と決めておけば、店舗で対応を進められる範囲が明確になります。
運用を変えた後は、店舗からの問い合わせ件数に加え、回答までにかかった時間や、どの判断で対応が止まったかも確認しましょう。店舗から同じ相談が繰り返し届く場合は、判断基準をマニュアルに追記する目安になります。
チェーンストア理論を実践するには?店舗業務を標準化する4ステップ
1.店舗ごとのやり方を洗い出す
開店準備など、店舗によって手順が異なる業務を一つ選びます。複数の店舗で、作業の順番、担当、完了を判断する基準を聞き取りましょう。たとえば、売場の準備が終わっていても、レジの準備状況が分からず開店直前に確認が集中するなら、作業そのものとあわせて、完了の共有方法を見直します。
2.共通ルールと店舗の裁量を決める
開店準備なら、レジの起動確認や入口の安全確認など、開店までに終える項目を本部が定めます。一方、各作業の順番や担当の割り振りは、店舗のレイアウトやシフトに合わせて決められます。業務分解図に作業、担当、判断する人を並べると、本部と店舗の分担を整理できます。
3.モデル店舗で試し、マニュアルやチェックリストにまとめる
モデル店舗で仮の手順を使い、忙しい日や少人数のシフトでも回るかを確かめます。たとえば、チェック欄だけでは異常時に迷う場合は、マニュアルに「レジが起動しないときの連絡先と代替対応」を追記します。試行で見つかった問題を修正し、各店に展開します。
4.現場の声を集め、標準手順を更新する
導入後は、開店直前の確認漏れや、本部への問い合わせがどの項目で起きているかを見ます。複数の店舗で同じ質問が出る場合は、手順や判断基準に分かりにくい部分がないかを確認します。本部で更新担当を決め、変更箇所と適用日を各店へ共有しましょう。
まとめ|チェーンストア理論を、店舗で使えるルールに落とし込む
店舗ごとの運営にばらつきがあるときは、開店準備や新人教育など、違いが出やすい業務を一つ選んでみましょう。業務分解図で本部と店舗の担当を整理し、マニュアルには現場で迷いやすい手順や判断基準を残すと、店舗が増えたときにも同じやり方を伝えやすくなります。

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