病院業務の効率化は、多くの医療機関にとって避けて通れない課題です。事務・看護・受付の各部門では、人手不足や業務量の増加により、日々の業務が回りきらないと感じる場面も増えています。
一方で、業務の進め方や仕組みを見直して現場の負担を減らしながら医療の質を保つことは十分に可能です。
本記事では、事務・看護・受付それぞれの業務を効率化する具体策とツールを紹介します。
人手不足や業務過多に悩む病院向けに、事務・看護・受付それぞれの業務を効率化する具体策とツールを整理した実践ガイドです。業務を可視化する基本ステップから、部門別の改善ポイント、DXやツール活用の考え方まで網羅的に解説。現場の負担を減らしながら医療の質を保ち、経営改善にもつなげたい方に役立つ内容です。
病院業務を効率化すべき理由
病院業務の効率化が求められる背景には、単なる忙しさだけでなく、医療現場を取り巻く構造的な課題があります。ここでは、病院業務を効率化すべき理由を3つ解説します。
医療現場の人手不足と業務過多の現状
多くの病院では人手不足が慢性化しています。看護師や医療事務、受付スタッフは限られた人数で業務を回しており、一人あたりの業務量が増えやすい状況です。
患者対応に加えて書類作成、入力作業、確認業務が重なり、本来の役割以外の作業に時間を取られているケースも少なくありません。こうした状態が続くと、残業の常態化や業務の後回しが起こりやすくなります。
効率化が医療の質・スタッフ満足度にも影響する理由
業務に追われる状態では、確認不足や対応のばらつきが生じやすくなります。医療の質だけでなく、患者とのコミュニケーションにも影響します。
業務の流れを整理して無駄な作業を減らせば、患者対応に充てられる時間を確保することが可能です。結果として医療の質が安定し、スタッフ自身も働きやすさを実感しやすくなります。
病院業務効率化が経営改善につながるポイント
病院業務の効率化は、現場負担の軽減だけにとどまりません。業務時間の短縮や残業削減は、人件費の抑制や稼働効率の改善にもつながります。また、受付や会計の流れがスムーズになると患者満足度の向上にも期待できます。
病院業務効率化の基本ステップ
現状を把握しないまま改善を進めると、かえって業務が複雑になりかねません。ここでは、病院全体で取り組みやすい効率化の基本ステップを3つ解説します。
病院業務を可視化し、ボトルネックを特定する
最初に取り組みたいのが、病院業務の可視化です。事務・看護・受付それぞれの業務を洗い出し、誰が、どの作業を、どの順番で行っているのかを整理します。具体的には、次のような手順で進めると可視化しやすくなります。
まずは対象となる業務を一つ決めます。たとえば「午前中の受付から会計まで」や「看護師の申し送り業務」など、範囲を絞ることがポイントです。
次に、その業務を時系列で書き出しましょう。「来院→受付→保険証確認→案内→入力→呼び出し」といったように、実際の流れを順番に整理します。
最後に、「待ち時間が発生している」「同じ情報を二度入力している」「確認のために人が止まっている」箇所に印を付けます。該当箇所が病院業務効率化の優先的な改善ポイントです。
紙・FAX・Excel中心の運用を見直す
病院では、紙やFAX、個別管理のExcelが今も多く使われています。こうした運用方法は柔軟に使える一方で情報が分散しやすく、更新漏れや転記ミスが起こりやすい点が課題です。
すべてを一気に置き換える必要はありませんが、「なぜこの運用を続けているのか」を確認し、見直せる部分から改善していくことが重要です。
特に部門間で同じ情報を扱っている場合は、管理方法を統一するだけでも業務負担を減らせます。
業務の標準化・マニュアル化で属人化を排除する
特定のスタッフしか分からない業務が多いほど、休職や異動時の負担は大きくなりがちです。業務手順を整理し、誰が見ても分かる形でマニュアル化しておけば、引き継ぎや教育にかかる時間を減らせます。
また、判断基準を明確にすると対応のばらつきを防ぎやすくなります。
事務部門の病院業務を効率化する方法

事務部門は、病院業務全体を支える重要な役割を担っています。ここでは、事務部門で取り組みやすい病院業務効率化の方法を具体的に解説します。
受付業務の効率化(オンライン受付・チェックイン自動化)
受付業務は、来院が集中する時間帯ほど負担が大きくなります。
そのため、オンライン受付や事前入力を取り入れて来院時の確認作業や記入対応を減らしましょう。チェックインを自動化すれば、受付スタッフが一人ひとりに対応する時間が短くなり、待ち時間の緩和にもつながります。
会計処理・事務書類の作成効率を上げる方法
会計処理や事務書類の作成は、正確さが求められる一方で作業量が多くなりがちです。計算や入力を手作業で行っている場合、確認に時間がかかります。
そこで入力項目の整理や自動計算を活用し、作業時間を抑えながらミスを防ぎましょう。
診断書・保険書類の自動化(OCR・テンプレ化)
診断書や保険書類は、同じ内容を何度も転記する場面が多い業務です。OCRで文字を読み取り、定型文をテンプレート化しておくと作成にかかる手間を減らせます。書類作成の時間が短くなれば、他の業務に時間を割けるようになります。
予約管理の効率化(Web予約システム導入)
電話のみの予約管理は、対応できる時間や人数に限りがあります。
そこでWeb予約システムを導入すれば、患者が空き状況を確認しながら予約が可能です。予約情報を一元管理できるため、ダブルブッキングや確認作業の負担も減らせます。
問い合わせ対応の効率化(AIチャットボット活用)
診療時間や持ち物、手続きに関する問い合わせは、内容が重複しやすい傾向があります。
よくある質問をチャットボットにまとめておけば、電話や窓口での対応件数を抑えられます。なお、AIチャットボットは診療内容や症状の判断には用いず、受付手続きや来院前の確認事項など、事務的な問い合わせに限定して活用することが前提です。
看護部門の病院業務を効率化する方法
看護部門の業務は患者対応を軸にしながら記録や申し送り、物品管理など多くの作業が並行して発生します。ここでは、看護師の業務特性を踏まえた病院業務効率化の方法を解説します。
看護記録・申し送りを効率化するICTツール
看護記録や申し送りは、情報の正確さと共有のしやすさが求められます。手書きや口頭中心の場合、記録に時間がかかり、伝達漏れも起こりやすくなるのがデメリットです。
ICTツールを使って記録様式を統一すれば、入力や確認の手間を抑えながら必要な情報をすぐに共有できます。また、過去の記録を振り返りやすくなるため、引き継ぎ時の確認作業もスムーズに進みやすいのが特徴です。
電子カルテ入力を効率化するポイント
電子カルテは便利な一方で、入力項目の多さが負担になることがあります。入力ルールが曖昧なままだと、記載内容にばらつきが出やすいのもデメリットになりやすいです。
そこで定型文の整備や入力範囲を整理し、記録にかかる時間を抑えましょう。入力の目的を明確にすると、「念のための過剰入力」を減らせます。
ナースステーション内の情報共有をスムーズにする方法
ナースステーションでは、急な変更や連絡事項が頻繁に発生します。掲示物や口頭連絡だけに頼ると情報を見落とすリスクも高まります。
ナースステーションでは共有方法を整理し、必要な情報にすぐアクセスできる環境を整えましょう。情報の置き場所を決めておくと、探す時間や確認の手間を減らせます。
物品管理・配薬・ルーティン業務の効率化
物品管理や配薬、定期的に発生する業務は、毎日の積み重ねで多くの時間を占め、負担も増えやすくなります。
管理方法や手順を見直し、無駄な動きや二重確認を減らして日常業務を軽くしましょう。作業手順を固定することで、担当者が変わっても同じ流れで対応しやすくなります。
業務分担の見直しで看護師の負担を軽減
看護師が担っている業務の中には、必ずしも看護師でなくても対応できるものもあります。
業務内容を整理して他職種と役割を分担すると、看護師が患者対応に集中しやすい環境を整えられます。
業務の負担の偏りを減らしてチーム全体の動きを安定させましょう。
受付部門の病院業務を効率化する方法
受付部門は患者が最初に接する窓口であり、来院の集中や問い合わせが重なりやすい部署です。ここからは、受付部門の病院業務を効率化する方法を解説します。
タブレット受付・QRコード受付で来院フローを自動化
タブレット受付やQRコード受付を導入すると、来院時の記入や確認作業を減らせます。患者自身が操作することで、受付対応にかかる時間を短縮できます。
来院から案内までの流れが整理されるため、混雑しやすい時間帯でも対応しやすいのがメリットです。受付スタッフが説明に追われる場面が減り、受付全体の動きが落ち着きやすくなります。
待ち時間削減につながるDX施策
待ち時間が長くなると、問い合わせや不満が増えやすくなります。
そこで順番待ち表示や呼び出し通知などを取り入れると、患者は状況を把握しやすくなります。進捗が見えるだけでも患者の不満が減り、受付への確認対応を減らすことが可能です。
結果として、受付スタッフが同じ説明を繰り返す負担を抑えられます。
受付〜会計までの動線見直しで負担を減らす
受付から会計までの動線が分かりにくいと、案内や誘導に時間がかかります。また、患者もどこに行っていいのかわからず、受付周辺が混雑しやすくなります。
そうした場合は動線を整理し、迷いやすいポイントを減らしましょう。物理的な配置を見直すだけでも、受付業務の負担軽減につながります。
受付対応の標準化(マニュアル・台本整備)
受付対応は、スタッフごとに説明内容や対応方法が異なりやすい業務です。対応が統一されていないと、説明に時間がかかる原因になります。
よくある質問や案内内容を台本化しておけば、誰でも同じ対応ができます。マニュアルや台本があれば新人スタッフでも対応しやすくなり、教育にかかる負担も減らせるのがメリットです。
多言語対応・問い合わせ削減の工夫
外国人患者への対応や制度に関する質問は、受付業務の中でも時間を要しやすい場面です。
急な外国語対応に焦らないためにも、多言語の案内表示や資料を整備して個別説明の回数を減らしましょう。事前に情報を伝えられる環境を整えると、受付でのやり取りを簡潔にできます。
病院業務効率化に役立つツール・システム
病院業務を効率化するうえで、ツールやシステムの活用は有効です。ただし、導入そのものが目的になると現場に定着しないケースもあります。ここでは、病院業務効率化に役立つ代表的なツールを解説します。
電子カルテ・オーダリングシステム
電子カルテやオーダリングシステムは、診療情報を一元管理できる点が強みです。紙や部門ごとの管理に比べ、情報確認にかかる時間を短縮できます。
ただし、運用ルールが曖昧なままだと入力や確認の負担が増えやすくなります。業務フローに合わせた使い方を整理することが、効率化につなげるポイントです。
受付・予約管理システム
受付や予約管理システムを導入すると、予約情報や来院状況をまとめて管理できます。電話や紙台帳での管理に比べ、確認作業が減ります。
また、受付・事務・診療側で同じ情報を共有できる点もメリットです。部門間のやり取りが減ることで、業務の流れがスムーズになります。
医療事務支援ツール(自動入力・OCR・AI記録)
医療事務支援ツールは、入力や転記作業の負担を減らす目的で活用します。OCRによる読み取りや自動入力を使えば、作業時間を短縮できます。さらに、人の手を介する工程が減りミスの防止にもつながるのもメリットです。
事務作業が集中しやすい病院ほど、効果を感じやすいでしょう。
院内コミュニケーションツール
院内の連絡を電話や口頭だけに頼ると、伝達漏れや確認の手間が増えるため、コミュニケーションツールを使って情報を一か所に集約しましょう。必要な情報だけを確認できる環境が整うと対応スピードが上がります。
特にシフト勤務が多い病院では、情報共有の負担軽減につながります。
業務可視化ツール(業務分解図・マニュアル作成ツール)

業務可視化ツールは、日々の業務内容を整理するための土台になります。業務分解図やマニュアル作成ツールを使うと、業務の流れを客観的に把握できます。また、改善ポイントを見つけやすくなり、属人化の防止にも役立つのが特徴です。
他のシステムを活かすためにも、業務可視化は重要な役割を担います。
病院業務効率化を成功させるためのポイント
病院業務の効率化は、仕組みやツールを整えただけでは完結しません。実際の現場で使われ続けるかどうかが重要です。ここでは、病院業務効率化を一時的な取り組みで終わらせず、継続させるためのポイントを解説します。
スタッフ全員が運用しやすい体制を作る
新しい仕組みは、現場で使いにくいと定着しません。業務を担うスタッフが無理なく使える形に整えることが重要です。
操作や手順が複雑すぎると、従来のやり方に戻ってしまう原因になります。現場の意見を取り入れながら、運用しやすい形に調整しましょう。
ツール導入後のフォローアップと改善
ツール導入後には、想定していなかった課題が出てくることもあります。課題を放置してしまうと、せっかく導入したツールが現場で使われなくなるケースも少なくありません。
そうなる前に定期的に使い勝手を確認し、小さな調整を重ねることが大切です。フォローアップを前提に進めることで、業務効率化の効果を維持しやすくなります。
小さな成功体験の積み重ねで定着しやすくする
病院全体を一度に変えようとすると、負担が大きくなります。まずは一部門や一業務から取り組みましょう。
効果を実感できる成功体験があると、他の部門にも広がりやすくなります。小さな改善を積み重ねることが、病院業務効率化を根付かせる近道です。
病院業務の効率化は“現場を守る仕組みづくり”が鍵
病院業務の効率化は、単に作業を早く終わらせることが目的ではありません。人手不足が続く中でも、現場が無理なく回り、医療の質を保てる状態をつくることが重要です。
事務・看護・受付の効率化ポイントのおさらい
事務部門では、書類作成や問い合わせ対応の整理が負担軽減につながります。看護部門では、記録や情報共有の見直しが業務の流れを整えます。受付部門では、来院フローや対応の標準化が混雑を抑えるポイントです。
どの部門も共通しているのは、「業務を仕組みで支える」という視点です。部分ごとの改善が積み重なることで、病院全体の業務効率が向上します。
DXの波に乗ることで病院業務は大きく改善できる
DXは、病院業務効率化を進めるうえで効果的です。ただし、ツールを導入すること自体が目的になると現場に定着しにくくなります。業務の流れを整理したうえでDXを取り入れ、現場に合った形で効率化を進めましょう。
まずは一部門から改善を始めるステップがおすすめ
病院業務の効率化は、いきなり全体を変える必要はありません。まずは課題が見えやすい部門や業務から着手することで、無理なく進められます。自院に合った形で、できるところから見直していきましょう。

The Ultimate Guide to Improving Hospital Efficiency:
Practical Strategies and Tools for Administration, Nursing, and Front Desk Staff
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