人手不足やコスト削減の要請が高まる中、多くの企業が業務効率化を目指しています。その鍵を握るのが「DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。本記事では、DXを活用した業務効率化の基本から、具体的な取り組み方、導入時の注意点までをわかりやすく解説します。

目次
  1. DXとは?業務効率化との関係性
    1. DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義
    2. DXと単なるデジタル化の違い
    3. 業務効率化がDXの出発点である理由
  2. なぜ今、業務効率化が必要なのか
    1. 少子高齢化による人手不足
    2. 働き方改革やテレワーク対応の必要性
    3. DX・業務効率化を阻む属人化と旧来業務
    4. DXで変化に強い組織をつくるための業務効率化戦略
  3. DXで実現する業務効率化のアプローチ
    1. RPAで実現するDXによる定型業務の自動化と効率化
    2. クラウドツールによる業務の可視化・情報共有
    3. AIやBIツールによる意思決定の迅速化
    4. ノーコード/ローコードツールで現場が主導できる仕組みづくり
    5. BPRとDXを連携させた業務プロセス改革による効率化
  4. DX導入における主な課題と注意点
    1. 社内のITリテラシー格差と抵抗感
    2. 既存業務の見直し不足(「ツール導入=DX」ではない)
    3. 部門ごとの最適化による全体最適の欠如
    4. DX推進人材の不足と外部活用の検討
  5. DXによる業務効率化を成功させる5つのポイント
    1. 現状業務の可視化と課題の明確化から始める
    2. 小規模なプロジェクトでスモールスタートする
    3. 現場と経営層の巻き込み体制をつくる
    4. 業務改善とシステム導入をセットで考える
    5. 定量的な目標設定と改善サイクルを設ける
  6. DXは業務効率化の「手段」であり「起点」
    1. 業務効率化はDXの第一歩であり基盤である
    2. DXで業務効率化した先にある“価値創出”に目を向ける
    3. DXを活かすには「仕組みと運用」の両立が必要
  7. DXと業務効率化を“自社に合った形”で進めよう
  8. 業務効率化なら専門家にお任せ!

DXとは?業務効率化との関係性

DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して、企業のビジネスモデルや業務プロセス、組織文化を抜本的に変革し、競争力を高めることを指します。経済産業省の定義によると、DXとは「企業がデータとデジタル技術を活用し、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務や組織、企業文化を変えていくこと」とされています。

つまり、単なる「IT導入」ではなく、経営や事業のあり方そのものを見直すことがDXの本質です。

DXと単なるデジタル化の違い

混同されやすいのが「デジタル化」と「DX」の違いです。以下のように、目的と範囲の広さに大きな違いがあります。

項目デジタル化DX(デジタルトランスフォーメーション)
対象一部の業務や作業組織全体の業務・文化・ビジネスモデル
内容アナログ業務のIT化(例:紙→デジタル)ITを軸に業務・事業の再構築
目的効率化や省力化競争優位性の獲得・変化への適応
Excel導入、システム化顧客体験の変革、サブスク型ビジネスへの転換

例えば、「紙の書類をPDFにする」のはデジタル化に過ぎませんが、「書類が不要なワークフローを再設計する」のはDXにあたります。

業務効率化がDXの出発点である理由

DXは最終的には新たな価値の創出やビジネスモデルの変革を目指すものですが、その第一歩は「業務効率化」にあります。なぜなら、非効率な業務プロセスをそのままにしていては、いくらITを導入しても効果は限定的だからです。

業務効率化は、次のような変化を生み出します。

  • 人手や時間のムダを減らし、付加価値業務に集中できる
  • データを活用する土台(蓄積・連携)が整う
  • 社員のITリテラシーが向上し、変化への抵抗感が減る

これらはすべて、DXを本格的に推進していく上で不可欠な土壌づくりになります。
つまり、業務効率化は「手段」であると同時に、「DX実現の入口」でもあるのです。

なぜ今、業務効率化が必要なのか

少子高齢化による人手不足

日本では少子高齢化の進行により、労働人口が年々減少しています。総務省の統計によると、生産年齢人口(15〜64歳)はピーク時の1995年と比べて1,000万人以上減少しています。このような状況では、従来と同じ体制・工数で業務をこなすのは不可能です。

そのため、「限られた人員で最大の成果を上げる」ことが企業経営にとって必須課題となっており、業務効率化は避けて通れない道となっています。

※参照:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd121110.html

働き方改革やテレワーク対応の必要性

近年は、政府の「働き方改革」や新型コロナウイルスを契機としたテレワークの普及などにより、柔軟な働き方への対応が求められるようになりました。

そのためには、紙の資料や対面での承認フローなど、従来の非効率な業務プロセスを見直す必要があります。業務がデジタル化・自動化されていなければ、テレワークや在宅勤務はスムーズに進みません。

こうした背景からも、業務効率化を起点とする業務の見える化・仕組みの再構築が急務となっています。

DX・業務効率化を阻む属人化と旧来業務

長年の慣習や個人の経験に依存した業務は、属人化の温床になりやすく、担当者の異動・退職によって業務が滞るリスクを抱えています。また、紙・FAX・Excelなどに頼るアナログ業務も、手作業によるミスや情報共有の遅れを招きやすくなります。

これらの非効率な業務を放置することは、生産性の低下だけでなく、企業競争力の低下にも直結します。

DXで変化に強い組織をつくるための業務効率化戦略

顧客ニーズの多様化、競合の増加、ビジネス環境の変化など、企業を取り巻く状況はかつてなくスピーディーに変化しています。この変化に柔軟かつ迅速に対応するためには、業務フローを最適化し、余力を生み出すことが不可欠です。

業務効率化は、単なるコスト削減ではなく、企業が変化に強くなるための体力づくりとも言えるのです。

DXで実現する業務効率化のアプローチ

DXによる業務効率化は、「ただITツールを導入する」だけでは実現しません。重要なのは、業務全体を見直し、最適な手法で業務の仕組みを再構築することです。

ここでは、DXを活用して業務効率化を図る代表的なアプローチを紹介します。

RPAで実現するDXによる定型業務の自動化と効率化

RPA(Robotic Process Automation)は、人間が行っている定型業務をソフトウェアロボットに代行させる技術であり、データの転記や集計、メールの自動送信、請求書の処理やチェック作業などに効果を発揮します。

これまで人手で何時間もかかっていた作業が、24時間、ミスなく、高速で処理されるようになることで、大幅な時間削減と品質向上が期待できます。

クラウドツールによる業務の可視化・情報共有

Google WorkspaceやMicrosoft 365などのクラウドツールを活用することで、リアルタイムでの情報共有や共同作業が可能となり、ファイルのやり取りにかかる時間や手間を削減できます。また、過去の情報も簡単に検索・再利用できるため、業務の効率化が進みます。さらに、テレワーク環境においても社内との連携がスムーズに行えるほか、情報がクラウド上で一元管理されることで、特定の担当者に依存しない仕組みが構築でき、業務の属人化を防ぐという副次的なメリットも得られます。

AIやBIツールによる意思決定の迅速化

いくら業務データが蓄積されても、それを分析・活用できなければ、単なる情報の山であり、いわば宝の持ち腐れとなってしまいます。そこで活用したいのが、AI(人工知能)やBI(ビジネスインテリジェンス)ツールです。これらを導入することで、売上推移の自動分析や可視化、顧客の行動パターンの把握、さらには将来予測に基づいた在庫や人員の最適化といった高度な分析が可能になります。こうした定量的なデータをもとにすることで、勘や経験に頼るのではなく、根拠ある迅速な意思決定が実現でき、より精度の高い経営判断を下すことができます。

ノーコード/ローコードツールで現場が主導できる仕組みづくり

これまでシステム開発には専門的な知識を持つエンジニアの存在が不可欠でしたが、近年ではノーコード/ローコードツールの登場により、非エンジニアでも業務アプリやワークフローを自ら構築できる環境が整いつつあります。これにより、業務部門が自ら課題に応じたアプリを作成・改善できるようになり、現場で発生した課題を即座に解決できる体制が実現します。また、IT部門とのやりとりにかかる時間や工数も削減され、現場の知見を反映したスピーディな対応が可能になります。結果として、全社的な対応力や業務改善のスピードが大きく向上し、組織全体の柔軟性と実行力が高まります。

BPRとDXを連携させた業務プロセス改革による効率化

業務効率化を本質的に成功させるためには、単に便利なツールを導入するだけでなく、業務そのものを根本から見直すことが不可欠です。このような業務の抜本的な見直しは「BPR(Business Process Re-engineering)」と呼ばれ、デジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)との相性も非常に良い取り組みです。例えば、不要な承認フローの削減や、作業の重複・手戻りの解消、さらには顧客視点で業務全体を再構築することで、業務の流れを抜本的に改善することが可能になります。BPRとDXを同時に推進することで、単なる一時的な効率化にとどまらず、継続的な業務改善が自律的に回る仕組みを構築できるようになります。

DX導入における主な課題と注意点

DXによる業務効率化は大きな成果が期待できる一方で、「導入したのに思ったように効果が出ない」という声も少なくありません。ここでは、DXを進める際に多くの企業が直面する主な課題と、その背景・注意点について解説します。

社内のITリテラシー格差と抵抗感

新しいツールやシステムを導入すると、「慣れたやり方を変えたくない」「使い方がわからない」という声が現場から上がることがあります。これは、ITリテラシーの差や心理的な抵抗感が原因です。特に年齢層の高い社員や、アナログ業務中心だった部門では、導入初期に混乱が起きやすくなります。

【注意点】

  • 現場の不安や疑問を汲み取るコミュニケーションを丁寧に行う
  • 操作マニュアルや研修などのサポート体制をあらかじめ用意する
  • 小さな成功体験を共有して社内全体の理解を促す

既存業務の見直し不足(「ツール導入=DX」ではない)

RPAやクラウドなどのITツールを入れること自体がDXだと思われがちですが、単なるツール導入はDXではありません。DXは、業務フローや働き方、場合によってはビジネスモデルそのものを変える取り組みです。ツールはあくまでそのための“手段”にすぎません。

【注意点】

  • DX導入前に「どんな業務をどう改善したいのか」を明確にする
  • 業務全体を俯瞰し、プロセス改革とツール導入をセットで考える

部門ごとの最適化による全体最適の欠如

ある部署だけでDXを進めても、他の部署と連携が取れていなければ、結果として業務全体の効率は上がりません。例えば、営業部門だけで営業支援システムであるSFA(Sales Force Automation)を導入しても、バックオフィスと連動していなければ、データ活用が中途半端に終わってしまいます。

【注意点】

  • 部門横断でDXの目的やゴールを共有する
  • 情報システム部門や経営層も含めた全社的な体制を構築する

DX推進人材の不足と外部活用の検討

DXを成功させるには、ITの知識だけでなく、業務理解・プロジェクト推進力・現場との調整力など、複合的なスキルが求められます。
しかし多くの企業では、このようなDX人材が社内におらず、外部任せになりがちです。

【注意点】

  • DX推進を担う人材の育成計画を立てる(例:社内研修、兼務体制)
  • 必要に応じて外部パートナーと連携し、内製と外注をバランスよく組み合わせる
  • 現場のキーパーソン(チャンピオン)を巻き込み、組織として育てる視点を持つ

DXによる業務効率化を成功させる5つのポイント

現状業務の可視化と課題の明確化から始める

DXを進める前に、まず必要なのは「現状を正しく把握すること」です。

業務フローがどこで滞っているのか、どの作業に時間がかかっているのかを洗い出すことで、改善すべき優先順位が明確になります。このステップで役立つのが、業務マニュアルの作成・整備です。

マニュアルを通して業務を言語化・可視化することで、属人化や非効率な手順を浮き彫りにできます。さらに、マニュアルはDX推進後の新しい業務手順の定着にも効果的です。

小規模なプロジェクトでスモールスタートする

DXは一気に進めるものではなく、小さなプロジェクトから始めて、効果と課題を確認しながら広げるのが成功のコツです。

例えば、一部門でRPAを試験導入し、成果が出たら他部門に横展開するなど、成功体験を積み重ねて全社導入へつなげるアプローチが有効です。失敗リスクを最小限に抑えながら、社内の理解と協力を得やすくなります。

現場と経営層の巻き込み体制をつくる

DXは全社的な変革であるため、経営層の強いリーダーシップが求められます。
一方で、実際に業務を担う現場が納得・共感して動かない限り、形だけのDXになってしまいます。

そのため、現場の声を拾いながら「現場が動きたくなる仕組み」を作ることが重要です。

  • 経営が「なぜやるのか」を明確に伝える
  • 現場の課題をヒアリングし、具体的な改善提案に落とし込む
  • 成果が出たら全社で称賛・共有し、次の意欲につなげる

業務改善とシステム導入をセットで考える

DX=システム導入、ではありません。業務改善の目的と方向性を定めたうえで、最適なツールを選ぶべきです。

  • 手順を見直さずにツールだけ入れても効果は限定的
  • ツールに業務を合わせるのではなく、業務に合うツールを選ぶ
  • システムに頼りすぎず、業務設計やマニュアルとの連携が重要

ここでも、「新しい業務フローをマニュアル化し、全社で共有・定着させる」ことがDXの定着を後押しします。

定量的な目標設定と改善サイクルを設ける

DXは一度で完成するものではありません。導入後も改善を重ねて、継続的に進化させていく姿勢が必要です。

  • KPIの設定と定期的な見直し
  • 利用者の声をフィードバックに反映
  • 業務マニュアルの更新・教育体制の整備

特に、業務マニュアルをアップデートし続ける仕組みを持つことで、属人化を防ぎながら改善を維持できます。“DXの持続可能性”は、仕組みと習慣にかかっています。

DXは業務効率化の「手段」であり「起点」

DXを推進する目的は、単に作業を減らすことでも、最新のツールを使うことでもありません。本質は「企業として変化に強くなるための“土台”をつくること」にあります。ここでは、DXと業務効率化の本質的な関係性について、改めて確認しましょう。

業務効率化はDXの第一歩であり基盤である

多くの企業がDXを導入する際、最初のテーマとして掲げるのが「業務効率化」です。
非効率な業務を放置したままでは、どれほど高度な技術を取り入れても期待する成果は得られないからです。業務効率化に取り組むことで得られるのは、単なる時間短縮や人件費の削減だけではありません。

  • 業務の属人化を防ぐ
  • 情報が整理され、次の意思決定が速くなる
  • 働きやすい環境が整い、人材定着率が上がる

つまり、業務効率化はDXという「企業変革」の土台づくりなのです。

DXで業務効率化した先にある“価値創出”に目を向ける

DXで目指すべき最終的なゴールは、業務効率化のその先の顧客や社会への新たな価値の創出です。
例えば、業務が効率化されて生まれた時間やリソースを以下に転換できれば、DXは経営の武器になります。

  • 顧客対応の質向上(=顧客満足度の向上)
  • 新しい商品・サービスの開発に注力
  • 社員がクリエイティブな仕事に挑戦できる組織文化の醸成

業務効率化はゴールではなく、企業の競争力を高めるための“出発点”に過ぎません。

DXを活かすには「仕組みと運用」の両立が必要

DXによる業務効率化を持続させるためには、単発の施策ではなく、仕組みとして組織に根付かせることが重要です。
そのためには、次の2つが重要です。

  1. 業務の標準化・ルール化:誰が見ても理解できる状態を作る(=マニュアル整備)
  2. 改善の継続:現場の声をもとに定期的な見直しを行う体制

特に、業務マニュアルは業務の可視化・定着・改善のサイクルを支える中核です。
DXの推進と同時に、マニュアルの整備・更新をルーチン化することをおすすめします。

DXと業務効率化を“自社に合った形”で進めよう

最後に重要なのは、「自社にとって最適なDX・業務効率化の進め方を見つける」という視点です。業種や企業規模、組織文化によって、最適な手段やスピード感は異なります。

  • 全社的な構造改革を目指す企業もあれば、まず1部門から始める企業もあります
  • 内製で進める企業もあれば、外部パートナーと連携する企業もあります

大切なのは、目の前の業務課題に真摯に向き合い、できるところから一歩を踏み出すことです。そしてその一歩は、DXという大きな変革の始まりになるはずです。

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