マニュアルを作ることで、業務の属人化を防いだり、品質を一定に保ったり、教育の効率を上げたりと、多くのメリットがあります。一方で、「マニュアルって逆にデメリットもあるのでは?」「せっかく作っても使われなかったら意味がないのでは?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。

実際、マニュアル作成は目的や使い方を間違えると、時間やお金のムダになったり、更新が手間だったり、すぐに古くなってしまうリスクもあります。

この記事では、そんなマニュアル作成の主なデメリットと、それをどう解消していくかについて、わかりやすくご紹介していきます。

目次

マニュアル作成における時間とコストのデメリット

デメリット1 : 担当者の負担に

マニュアル作成は、単に文章を書くだけではありません。
実際には、業務内容の棚卸しや取材、構成の設計、文章表現の調整、社内レビューと修正対応など、非常に多くの工程を伴うため、想像以上に工数がかかることが多いのが現実です。

特に、マニュアル作成を現場の担当者が本業と兼務する形で行うケースでは、次のような課題が起きやすくなります。

  • マニュアル作成に時間が取られ、本来の業務(顧客対応・営業・開発など)に支障が出る
  • 急ぎのマニュアル対応が発生すると、本業の納期が遅れる
  • 関係者とのやり取り(レビューや承認)が多く、思った以上に時間が取られる

例えば、ある部門の業務マニュアルを新たに作成する場合でも、
「業務の棚卸し → 作業工程の整理 → 説明文のドラフト作成 → 上長や関係部門の確認 → 修正 → フォーマット調整 → 社内公開」
といった流れがあり、1人の担当者で対応するには限界があることも少なくありません。

このように、マニュアル作成に必要な時間は見積もり以上に膨らみがちであり、担当者の負担増によって他の業務にも悪影響が及ぶリスクがあります。

デメリット2 : コストの負担も意外に大きい

マニュアル作成には、目に見えにくいコストが多く潜んでいます。
人件費はもちろんのこと、次のような直接・間接コストがかかります。

  • 作成・編集に使うソフトウェア(例:PowerPoint、Word、マニュアル作成SaaSなど)のライセンス費用
  • 社内外の関係者の工数(インタビュー対応、レビュー参加など)
  • 印刷・製本・配布のための紙代・印刷費・ファイリング用品の購入費
  • バージョンアップや再印刷が必要な場合の再制作費

また、紙ベースのマニュアルを使用している場合、以下のような問題が発生します。

  • 社内の人数分を印刷するたびに継続的なコストがかかる
  • 一部だけ変更する場合でも全体を再印刷する必要がある
  • 最新版を誰が持っているかわからず、旧版が使われてしまうリスクがある

業務マニュアルを全社展開するような規模の場合、数十万円~数百万円単位でコストがかかることもあります。作成支援のために外部ライターやコンサルタントを活用する場合も、費用はさらに上乗せされます。

このように、マニュアル作成には「見えにくいけれど、確実に発生する」コストが多く存在することを理解しておくことが重要です。

デメリット3 : 更新コストも見逃せない

マニュアルは「作って終わり」ではありません。むしろ、作成後の運用・更新こそが重要なフェーズとなります。業務内容は常に変化するため、一度作ったマニュアルも定期的な見直しや修正が必要です。

例えば、次のような場面では、マニュアルの更新が必須となります。

  • 業務フローの変更(例:承認手順や担当部門の変更)
  • 使用しているシステムやツールのバージョンアップ
  • 法令や社内ルールの改定
  • よくある質問・トラブル対応が追加される

これらの変化に対応しないまま放置してしまうと、古い情報のまま業務が進められ、ミスや混乱が発生するリスクが高まります。さらに、実務では以下のような”地味だけど重要”な作業も発生します。

  • 修正箇所の特定と文言の書き換え
  • 最新版への差し替えと古い版の破棄
  • 関係者への通知・説明(メール送信・会議での周知など)
  • 関連する他の資料との整合性チェック

これらを手作業で繰り返していると、更新のたびに多くの時間と工数がかかり、結果的に放置されやすくなるという悪循環に陥ることも少なくありません。

解決策はコストと手間を抑える工夫

こうした更新コストやメンテナンスの手間を軽減するためには、仕組み化とツール活用が有効です。以下のような工夫を取り入れることで、効率的な運用が可能になります。

クラウドベースのマニュアル作成ツールを活用

例えば、KibelaやTeachme Bizといったクラウド型マニュアルツールを使えば、

  • ブラウザ上でいつでも編集・更新が可能
  • 修正内容が即時に反映され、常に最新の状態を維持
  • 関係者に自動で通知できる

といった機能により、更新スピードと情報の正確性が大きく向上します。

テンプレートによる標準化

「構成や見出しがバラバラで、どこを直せばいいか分からない」状態を防ぐため、統一フォーマットのテンプレートを活用しましょう。

  • 項目名や順番を定型化しておけば、修正箇所が一目で分かる
  • 担当者が変わっても同じルールで運用できる

テンプレートによる標準化は、更新時の迷いや抜け漏れの防止にもつながります。

更新履歴の記録と通知機能

クラウドツールの多くには、更新履歴の自動記録機能や閲覧者への変更通知機能があります。これにより、

  • いつ・誰が・どこを修正したかが明確
  • 読み手に対して「ここが変わった」と伝えられる
  • 更新後の反映状況を追跡可能

結果として、手間なく正確にマニュアルの最新版を管理・周知する体制が整います。

運用・管理におけるデメリットと対策

デメリット1 : 情報の更新が煩雑で属人化しやすい

マニュアル運用のよくある課題のひとつが、「誰がどこをいつ更新するのか」が曖昧なことです。更新のルールや担当が決まっていないと、修正漏れや情報の陳腐化が発生しやすく、結果としてマニュアルが使われなくなる事態につながります。

特に次のような状況では、属人化によるリスクが高まります。

  • マニュアル作成や修正を特定の担当者1人に任せきり
  • 引き継ぎがされないまま担当者が異動・退職
  • 更新履歴が共有されておらず、どこが最新かわからない

「現場で異なるバージョンのマニュアルが使われている」「そもそも修正されていない」などの混乱や非効率が生じるリスクが高まります。

デメリット2 : 管理コストの増加と複雑化

マニュアルの量が増えていくにつれて、以下のような運用負荷やコストも比例して増加していきます。

  • バージョンごとの管理(最新版がどれか分からなくなる)
  • サーバー管理やバックアップ対応
  • マニュアル専用の管理者が必要になる
  • 管理者の教育・引き継ぎのための時間と労力

特にファイルベース(WordやExcel、PDFなど)で管理している場合は、同名ファイルの多重保存・誤って古い版を使用してしまうなど、ヒューマンエラーも発生しやすくなります。

デメリット3 : アクセス管理の甘さによる情報リスク

社内文書であっても、マニュアルの中には機密情報や社外秘の業務ノウハウが含まれていることもあります。
しかし、適切なアクセス管理がされていないと、以下のようなトラブルにつながりかねません。

  • 不要な部署や外部にまで情報が閲覧される
  • 逆に必要な人が情報にアクセスできず、業務に支障をきたす
  • 誰が何を閲覧しているのかが不明で、セキュリティ事故のリスクが高まる

このような事態を防ぐには、アクセス権限の設定や管理履歴の可視化が不可欠です。

デメリット4 : 利用状況の把握ができず、改善につながらない

「せっかく作ったのに誰も見ていない」「どのページが役に立っているのか分からない」
こうした状態では、マニュアルの質を向上させるPDCAサイクルを回すことができません。

特に次のような情報が見えないと、改善が難しくなります。

  • 閲覧数や検索キーワード
  • どのページがよく参照されているか
  • 利用頻度が低いマニュアルの特定
  • フィードバックやレビュー履歴

利用実態が分からないことは、マニュアル改善の大きなブレーキになります。

対策はマニュアル管理ツールの活用で運用負荷を軽減

こうした運用・管理のデメリットを解消するには、マニュアル管理に特化したツールの導入が非常に効果的です。

専用SaaSの活用(例:NotePM、トースターチーム など)

  • バージョン管理機能:履歴を自動で記録し、最新版が常に明確
  • アクセス権設定:部署・職種ごとに閲覧・編集の制限が可能
  • クラウド保存:常に最新の内容を社内全体で共有可能

利用ログの可視化

  • 閲覧数・更新履歴・人気ページなどをダッシュボードで確認
  • 閲覧が少ないページを削除・改善する判断材料にも

ワークフロー機能の活用

  • マニュアル更新時の申請・承認・公開をツール上で自動化
  • 担当者が交代しても属人化せずに更新体制を維持可能

このような仕組みやツールを導入することで、マニュアルの運用負荷を軽減し、情報の正確性・鮮度・活用度を保つことができます。マニュアルが「作ったら終わり」ではなく、「日常業務に根付くナレッジ資産」になるように運用体制を整えることが、長期的な成功の鍵です。

マニュアル作成による形式化の弊害とその対応策

マニュアルは業務の標準化・属人化防止・教育の効率化といったメリットがある一方で、過度な形式化や不適切な運用によって、かえって現場に悪影響を及ぼすリスクもあることを理解しておく必要があります。

以下では、マニュアル作成によって生じやすい3つの典型的な弊害と、その対応策を詳しく解説します。

デメリット1 : 柔軟性を失うリスク

マニュアルを細部まできっちりと作り込むことは、一見良いことのように思えます。しかし、あまりに細かく形式化されすぎたマニュアルは、現場での柔軟な判断や臨機応変な対応を阻害する要因にもなりかねません。

たとえば、想定外のトラブルや例外対応が発生した際に、
「マニュアルに書いていないから動けない」
「判断を保留し、上司の指示を待つしかない」
といった状況が生まれることがあります。

マニュアルの目的はあくまで現場を支える補助線であり、現場の思考を止めるものではないという原則を忘れてはいけません。

デメリット2 : 属人化の問題

もうひとつの問題は、「Aさんしか理解できないマニュアル」になってしまうこと。

例えば、以下のような構成や記述は、属人化を招きやすくなります。

  • 作成者の頭の中だけで完結している内容構成
  • 専門用語が多く、初学者には理解しにくい
  • 実際の業務フローが反映されていない「理想論マニュアル」

このような状態では、情報が書かれていても“伝わらない”マニュアルとなり、せっかく作っても活用されません。

マニュアルは「誰でも理解し、誰でも実行できる」ことを前提に構成・表現されるべきです。

デメリット3 : 情報の陳腐化・誤情報の拡散リスク

一度作成したマニュアルをそのまま放置してしまうと、情報が古くなり、誤った業務が引き継がれてしまうリスクがあります。

よくある例としては:

  • システム変更後も旧マニュアルが使われている
  • 社内ルールが変わったのに修正されていない
  • 誤字・脱字や曖昧な表現がそのまま残っている

こうした状態が続くと、「マニュアルは信用できない」という認識が広がり、マニュアル離れが進む原因にもなります。

対応策はレビュー体制と定期的な見直し

これらのリスクを回避するためには、マニュアル作成・運用時のルール整備と仕組み作りが重要です。

マニュアルに書いていないことは心構えでカバーする

マニュアルには、すべてのケースや細かい状況を網羅して記載するのは難しいものです。だからこそ大切なのが、「心構え」や「判断の軸」を共有しておくことです。

例えば、「この作業のゴールは何か」「なぜこの手順があるのか」といった目的や、「お客様への配慮を忘れない」「わからないことは確認を徹底する」といった心構え・注意点をマニュアルに記載しておくことで、マニュアルに載っていない状況にも柔軟に対応できるようになります。

つまり、マニュアルは“手順書”であると同時に、“考え方”や“姿勢”を伝えるツールでもあるのです。

柔軟性を確保した構成にする

すべてを逐一指示するのではなく、判断の余地を残すマニュアル構成も選択肢の一つです。

  • Q&A形式
  • 判断フローチャート
  • ケース別対応例の記載

これにより、現場の状況に応じた行動が取りやすくなります。

定期レビューのスケジュール化

情報の陳腐化を防ぐには、定期的な見直しの仕組みを導入することが有効です。

  • 半年に一度の棚卸し
  • 改定履歴の記録と可視化
  • 「変更依頼フォーム」の設置など、現場からのフィードバック受付体制も整える

多角的なチェック体制の構築

作成者だけでなく、複数の部署や関係者によるレビューを通じて、情報の正確性・表現のわかりやすさを確認します。
特に、新人・非専門職など、実際の読み手を想定した確認プロセスが重要です。

デメリットを最小限にするための5つのポイント

マニュアル作成による弊害を防ぐためには、作成の目的・対象・ツール・改善体制・関係者との連携の5点を明確にしておくことが効果的です。

1. 目的を明確にする

マニュアルの目的が曖昧なままだと、内容や構成もブレがちです。

  • 教育用か
  • 業務標準化のためか
  • 属人化防止か

目的を最初に明文化し、それに即した構成や記載レベルに調整しましょう。

2. 誰に向けたマニュアルかを明確にする

対象読者によって、使う言葉や記述の深さは大きく変わります。

  • 新入社員向け
  • 現場の中堅社員向け
  • 他部署向け(非専門職)

誰が読むかを明確にすることで、「伝わるマニュアル」になります。

3. 適切なツールの選定

  • 紙/PDF/クラウド型ツールなど、業務環境に合ったツール選びを行いましょう。
  • スマホやタブレットでの閲覧が多い場合は、モバイル対応のWebツールがおすすめです。

4. 継続的な改善(PDCA)

マニュアルは一度作って終わりではなく、改善を重ねていくことで完成度が上がります。

  • フィードバックを収集
  • 閲覧データを分析
  • 内容を定期的にアップデート

このPDCAサイクルを意識的に回すことが大切です。

5. 関係者間のコミュニケーション

  • 作成者と利用者が日常的に情報共有できる環境をつくることで、「使われるマニュアル」へと進化します。
  • フィードバック会やチャットでの意見交換も効果的です。

デメリットを理解することでマニュアルはもっと活かせる

マニュアル作成には、時間・コスト・運用負担などのデメリットがつきものです。しかし、こうした課題をあらかじめ理解し、ツールの活用や体制の整備、関係者との連携を図ることで、十分に克服可能です。むしろ、デメリットを正しく理解しているからこそ、マニュアルを効果的に活用し、業務効率化・教育の質向上・属人化防止といった成果を得られます。

「マニュアル作成は手間がかかるから後回し」とせず、戦略的に取り組むことで、組織の力を底上げする重要な資産になるはずです。ぜひ、今回の記事を参考にマニュアル作成に取り組んでみてくださいね。

効率的なマニュアル作りは、プロに任せるのも一つの選択肢

マニュアルの作成には、計画・構成・デザイン・更新といった複数の工程が必要であり、手間も時間もかかります。実際、「作りかけで止まっている」「中途半端に作ったけど使われていない」といった声も少なくありません。社内で完結させようとすると、他業務との兼ね合いでどうしても後回しになってしまいがちです。そういった場合は、マニュアル作成のプロに依頼するのも有効な手段です。

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