日々の経理処理や勤怠管理、契約書の確認など、バックオフィス業務は企業を支える重要な役割を担っています。ところが、こうした作業に時間や人手を取られすぎてしまい、本来注力すべき事業活動や営業に割くリソースが不足するケースも少なくありません。

「担当者が休むと業務が止まる」「紙の書類や二重入力に手間がかかる」などの課題を抱えている企業にとって、効率化は避けて通れないテーマです。

本記事では、バックオフィス効率化の必要性から具体的な方法、成功のためのポイントまでをわかりやすく解説します。

なぜバックオフィス業務の効率化が必要なのか

バックオフィスは売上を直接生み出す部門ではありませんが、企業活動を安定して支えるために欠かせない存在です。

経理・人事・総務といった業務は日々の運営に直結しており、ここに無駄や遅れがあると経営全体に悪影響を及ぼします。効率化を図ることで、経営の安定と企業の継続的な成長を実現できます。

バックオフィスが企業経営に果たす役割

バックオフィスは、会社を「裏から支える縁の下の力持ち」といえる存在です。

経理は資金の流れを管理し、人事・労務は社員が安心して働ける環境を整え、総務は契約や備品管理を通じて業務を円滑にします。

バックオフィスが機能していなければ、営業や企画といったフロント業務も滞ってしまいます。バックオフィスは表に見えにくいながらも、経営を安定させる基盤を担っているのです。

バックオフィス業務のよくある課題(属人化・紙文化・二重入力・承認遅延など)

経済産業省の調査でも、業務効率化やコスト削減は企業がDXに期待する成果の上位に挙げられている一方で、取り組みが十分に進んでいない企業も多いとされています。

参考:DX支援ガイダンス – デジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチ – P.6

多くの企業では、バックオフィスに以下のような課題が残っています。

  • 属人化:担当者が変わると業務が回らなくなる
  • 紙文化:紙の申請や印鑑が必要で、処理に時間がかかる
  • 二重入力:同じ情報を複数システムに登録しなければならない
  • 承認遅延:決裁者の確認に時間がかかり、業務全体が滞る

こうした課題は小さな手間に思えますが、積み重なると大きな時間のロスやミスにつながります。

効率化を進めて、属人化や業務遅延といった問題を根本から改善しましょう。

参考:紙の業務マニュアル運用の課題と解決策!デジタル化で業務効率を向上させる方法

バックオフィス業務効率化によって得られるメリット

バックオフィスを効率化することで得られる効果は単なる作業削減にとどまりません。企業全体の生産性向上やコスト削減、さらに社員のモチベーション向上まで幅広いメリットがあります。

ここでは代表的な3つのメリットを解説します。

ムダを減らし生産性を高める

手作業や二重入力を減らすことで、担当者はより重要度の高い業務に時間を割けるようになります。

たとえば、経費精算を紙からシステムに切り替えれば、集計や確認にかかっていた時間を大幅に削減できます。単純な入力作業を減らすことは業務スピードを高めるだけでなく、ミスの防止にもつながります。

結果として、同じ人員でもより多くの業務を正確に処理できるようになるのです。

コストを最小限に抑え経営を強化する

効率化によって人件費や紙・印刷代、郵送費などの間接コストを削減できます。

たとえば、電子承認システムを導入すれば印刷や押印、郵送といった業務にかかるコストをほぼゼロに近づけることが可能です。

無駄なコストを減らすことは、利益率の向上や経営基盤の強化に直結します。

働きやすい環境を整え社員の満足度を向上させる

業務の効率化は、社員の働きやすさにも大きく関わります。

煩雑な事務作業が減ることで残業時間が短縮され、ワークライフバランスの改善につながります。

また、クラウドやペーパーレス化によって在宅勤務やリモートワークがしやすくなり、柔軟な働き方が可能です。

結果として、社員の定着率やエンゲージメントを高める効果も期待できます。

バックオフィス業務を効率化する具体的な5つの方法

バックオフィス業務の効率化には、様々な方法があります。重要なのは、自社の課題に合った方法を段階的に取り入れることです。

次からは、代表的な改善方法を5つ紹介します。

業務プロセスの可視化と標準化

まず必要なのは、どの業務にどれだけの時間や手間がかかっているかを把握することです。

業務の流れをフローチャートや業務分解図で「見える化」すると、重複や無駄が一目で分かります。その上で手順を標準化すれば誰でも同じように作業でき、属人化の解消にもつながります。

さらに、標準化されたプロセスはマニュアルや教育資料としても活用でき、新人育成や引き継ぎもスムーズになるでしょう。

ペーパーレス化・電子承認の導入

紙の申請や承認は印刷や郵送に時間がかかり、紛失のリスクもあります。

電子承認システムやクラウド上の申請フォームを導入すれば、場所や時間を問わず承認が可能になり、処理スピードが大幅に上がります。

ペーパーレス化はコスト削減にも効果的です。

さらに、検索や保管も容易になるため、過去データの参照や監査対応の効率も向上します。

RPA・自動化ツールの活用

ルーチンワークが多いバックオフィスでは、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用が有効です。

RPAのような自動化ツールには、以下のような特徴があります。

方法特徴メリット注意点
RPA定型業務を自動化する人為的ミスを防ぎ、処理速度を高める導入や運用にコストがかかる
クラウドサービス情報を共有し、一元管理を可能にする在宅勤務やリモート対応がしやすくなるセキュリティ対策を徹底する必要がある
アウトソーシング専門業務を外部に委託する法改正対応や専門性を任せられる社内にノウハウが蓄積しにくくなる

RPAツールにはノーコードやローコードで使えるものもあり、専門知識がなくても導入できるケースが増えています。中小企業でも比較的導入しやすく、効果を実感しやすい分野といえるでしょう。

クラウドサービスによる情報共有

勤怠管理や経費精算、契約書管理といった業務では、クラウド型サービスの活用が効果的です。データを一元管理できるうえ、複数のメンバーが同時にアクセス・更新できるため、作業の重複や伝達漏れを防げます。

情報共有の手間が減ることで、遠隔地にいるメンバーとも円滑に連携できるようになります。

さらに、システムの更新やセキュリティ対策はベンダー側で対応してくれるため、社内のIT担当者にかかる負担を大幅に軽減できる点もメリットです。

アウトソーシングの活用

すべてを自社で対応しようとすると人員不足に陥りがちです。

給与計算や社会保険手続きといった専門性の高い業務は、アウトソーシングを利用するのもひとつの手です。

外部に任せることで社内リソースをコア業務に集中できるだけでなく、法改正対応なども安心して任せられます。

さらに、定額で契約できるサービスも多く、予算の見通しが立てやすいのも魅力です。

効率化が求められる代表的なバックオフィス業務4選

バックオフィス業務のなかには定型処理や確認作業が多く、特に効率化の効果が表れやすい分野があります。

なかでも日常的に発生しやすく、手間やミスのリスクが高い4つの業務を紹介します。

経理・会計業務(請求書処理、経費精算など)

経理・会計は、取引先とのやり取りや社員の経費精算など、日々多くの処理が発生する分野です。

紙やExcelで管理していると入力の手間や確認作業が膨大になり、ミスが発生しやすくなります。

請求書処理を電子化し、経費精算をシステム化するだけでも、作業時間は大幅に短縮できます。

さらに、仕訳やレポート作成まで自動化できれば、経営判断に役立つ数字をスピーディーに反映できるでしょう。

経理の業務効率化については、経理業務の業務効率を劇的に上げる方法とは?ツール・改善ポイントまで徹底解説!でも詳しくご紹介しています。

人事・労務管理(勤怠管理、給与計算、入退社手続き)

人事・労務は法令順守が求められる業務であり、正確さとスピードの両立が欠かせません。

勤怠管理を紙のタイムカードやExcelで行っている場合、集計の手間やミスのリスクが大きくなります。

クラウド型の勤怠管理や給与計算システムを導入すれば、入力や計算を自動化でき、法改正への対応も容易になります。

入退社手続きもオンライン化すれば、書類作成や提出の負担を減らし、社員にとってもスムーズなスタートが可能です。

人事の業務効率化については、人事業務を効率化!マニュアル作成で実現する効率化と生産性アップの秘訣とは?でも詳しくご紹介しています。

総務業務(契約書管理、備品発注、社内文書管理)

総務は「会社のなんでも屋」と呼ばれることもあるほど業務範囲が広く、効率化の余地が大きい分野です。

契約書や社内規程などを紙で保管していると、検索に時間がかかり管理が煩雑になりがちです。

電子契約サービスや文書管理システムを利用すれば、検索性やセキュリティが格段に向上します。

また、備品発注もオンラインで申請・承認を完結させれば、在庫管理やコスト削減にもつながるでしょう。

総務の業務効率化については、総務業務を効率化するマニュアル活用術|属人化を防ぎ、業務の質を底上げでも詳しくご紹介しています。併せてご覧ください!

情報システム管理(ID管理、問い合わせ対応)

情報システム部門は社内のアカウント管理やシステム利用に関する問い合わせ対応など、日常的に繰り返される業務が多くあります。

ID発行や権限設定を自動化すれば、担当者の負担を軽減しつつ、セキュリティの強化にもつなげることが可能です。

また、チャットボットを導入してよくある質問への回答を自動化すれば、問い合わせ対応のスピードが上がり、ユーザーの満足度も高まります。

結果的に、情報システム担当者はより高度な改善業務に時間を使えるようになります。

バックオフィス効率化を成功させるためのポイント

バックオフィスの効率化は、単にツールを導入すれば解決するものではありません。現状を把握し、小さな改善から始めてルールと運用を整え、社員を巻き込んで文化として根づかせることが大切です。

ここでは成功のために押さえておきたいポイントを解説します。

現状の課題を正しく把握する

効率化の第一歩は「どこに無駄や非効率があるのか」を明確にすることです。

業務フローを洗い出し、所要時間や担当者を整理すれば、ボトルネックが浮かび上がります。感覚に頼らず数値や実績をもとに現状を把握することで、改善すべき優先順位が明確になるでしょう。

さらに、この段階で現場の声を拾っておくと実態に即した改善策につながり、現場からの理解や協力も得やすくなります。

小さな業務から段階的に改善する

いきなり大規模な改革をしようとすると、現場に混乱や抵抗が生まれやすくなります。

まずは経費精算や勤怠管理など、負担が大きく効果が分かりやすい業務から改善を始めましょう。

小さな成功体験を積み重ねることで、社員の理解と協力を得やすくなります。

改善事例を社内で共有すれば、「次は自分の業務でも工夫してみよう」という意識の広がりにもつながります。

ツール導入と運用ルールの整備をセットで進める

効率化ツールを導入するだけでは、業務はスムーズに回りません。使い方や運用ルールが曖昧なままでは、かえって混乱を招く原因になります。

承認フローや権限設定、データ入力のルールなどをあらかじめ決めておきましょう。

ツールとルールを同時に整備すれば、社内への定着がスムーズになります。

さらに、定期的に見直しやアップデートを行えば、改善効果を持続的に高めることができます。

社員を巻き込んだ業務改善文化をつくる

効率化を長期的に根づかせるには、社員一人ひとりが「改善に参加している」という意識を持つことが欠かせません。

現場の声を反映させ、改善の成果を共有することで社員のモチベーションも高まります。効率化を単なる一時的なプロジェクトではなく、組織文化として育てることが重要です。

また、トップからの発信と現場の主体性が両立していれば、継続的な改善サイクルが自然と組織内に根づいていくでしょう。

バックオフィス業務を効率化しよう

バックオフィスの効率化は、単なる事務作業の削減ではなく、企業全体の競争力を高める取り組みです。

業務の可視化や標準化、ペーパーレス化、ツールやアウトソーシングの活用など、できる取り組みから着実に進めることで確実な成果が得られます。

まずは現状を整理し、小さな業務から改善に取りかかるのが効果的です。コストの削減や業務スピードの向上に加えて、社員の働きやすさやモチベーション向上といった副次的な効果も期待できるでしょう。

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