日々の業務において「何となく忙しい」「改善が必要だとは思うが、どこから手をつければいいのかわからない」と感じたことはないでしょうか。また、目線を上げて企業の成長や業務改善を進めたいと考えていても、「何が問題なのか分からない」「対策を打っても効果が出ない」と感じていませんか。その原因の多くは、企業の課題が明確化されていないことにあります。課題が曖昧なままでは、改善施策は場当たり的になり、DXや業務改革も思うように進みません。
本記事では、企業の課題を明確化する考え方と具体的な方法について、順を追って解説していきます。
日々の業務改善やDXが進まない原因は、企業の課題が曖昧なまま放置されていることにあります。本記事では、業務の見える化、現場ヒアリング、データ分析を通じて課題感を明確にする方法を解説。場当たり的な改善から脱し、組織全体で共通認識を持って本質的な改善を進めるための考え方と実践ステップを紹介します。
企業の課題感を明確にする必要性
企業活動の中で「改善が進まない」「対策が空回りする」と感じる場合、その背景には課題感の曖昧さがあることが少なくありません。なぜ企業にとって課題感の明確化が重要なのか、その理由を整理していきます。
課題が曖昧なままだと改善が進まない理由
企業の課題が曖昧なままだと、改善活動はどうしても手探りになります。たとえば「業務が忙しい」「効率が悪い」と感じていても、具体的にどの業務にどれくらい時間がかかっているのかがわからなければ、有効な対策は打てません。その結果、ツールを導入したり人員を増やしたりといった対処療法にばかり注力してしまい、根本的な改善につながらないケースが多くなります。「課題を明確にする」ことは、改善のスタート地点を正しく定めるために欠かせないのです。
企業の課題感がズレると“対策の方向”も間違える
経営層、管理職、現場社員、それぞれの立場で課題感がズレている企業もよくあります。経営層は「コスト削減が課題」と考えている一方、現場では「人手不足が深刻だ」と感じているといった状況です。このズレを放置すると、対策の方向性は噛み合わず、現場の納得感も得られません。課題感を明確にし、さらに‟共通認識”を持つことで、組織全体が同じ方向を向いて改善に取り組めるようになります。
課題感を明確にすることがDX・改善の第一歩
DXとは、デジタル技術を使って業務や組織を変革することですが、課題が曖昧なままだとこのDXも形骸化しがちです。「なぜデジタル化が必要なのか」、「どの業務を変えたいのか」を明確にすることで、DXは初めて意味を持ちます。課題感の明確化は、改善やDXを成功させるための最初の一歩とも言えるでしょう。
企業の課題感を明確にする方法1:現状把握(業務の見える化)
企業の課題を明確にするうえで、最初に取り組むべきなのが現状把握です。業務を「見える化」することで、感覚では気づきにくいムダや偏り、ボトルネックが自然と浮かび上がってきます。
業務を棚卸しして全体像を把握する
まず取り組みたいのが、業務の棚卸しです。棚卸しとは、日々行っている業務を洗い出し、一覧にすることです。普段は意識していないような細かい作業も含めて書き出すことで、業務全体の姿が見えてきます。全体像を把握することで、「どこに負荷が集中しているのか」「どこを改善すべきなのか」を冷静に確認できるようになります。
業務分解図で作業を細かく整理する
業務分解図とは、一つの業務を工程や作業単位に分けて整理した図のことです。たとえば「受注業務」であれば、問い合わせ対応、見積作成、受注入力といった形で分解します。作業を細かく見ることで、時間がかかっている工程や、担当者に依存している作業が浮かび上がってきます。

ムダ・重複・ボトルネックを発見するポイント
業務を可視化すると、同じ内容を何度も入力している、確認作業が多すぎるといったムダや重複が見えてきます。また、特定の工程で作業が滞っている場合、それがボトルネックです。ボトルネックとは、全体の流れを詰まらせている要因のことで、ここを改善するだけでも大きな効果が期待できます。
企業の課題感を明確にする方法2:現場ヒアリング
業務の流れを整理しただけでは、本当の課題は見えてきません。実際に業務を行っている現場の声を聞くことで、数字や資料だけではわからない課題感を具体的に把握できます。
現場の「困りごと」を引き出す聞き方
現場ヒアリングでは、単に「問題はありますか?」と聞くだけでは本音が出にくいものです。「時間がかかっている作業は何か」「ミスが起きやすい場面はどこか」といった具体的な質問を投げかけることで、現場の困りごとが言葉として出てきやすくなります。
管理職と現場で課題感がズレる理由
管理職は数値や報告をもとに判断するため、現場の細かな負担に気づきにくいことがあります。一方、現場は日々の業務に追われ、全体最適を考える余裕がない場合もあります。この立場の違いが課題感のズレを生む原因です。だからこそ、ヒアリングを通じてお互いの視点をすり合わせることが重要です。
課題の“感覚値”を言語化するコツ
「なんとなく大変」「やりにくい」といった感覚的な意見も、実は重要なヒントです。それを「どの作業にどれくらい時間がかかるのか」「どんな場面で困るのか」と具体化することで、課題として整理しやすくなります。
企業の課題感を明確にする方法3:データ分析
現場の感覚や印象を、客観的な課題として整理するためにはデータ分析が欠かせません。数値をもとに状況を把握することで、課題の優先度や改善効果を冷静に判断できるようになります。
数値から読み取れる課題(作業時間・業務量・ミス件数など)
データ分析では、作業時間、処理件数、ミス件数といった数値を確認します。数値は感覚と違い、客観的な判断材料になります。たとえば、特定の業務だけ極端に時間がかかっている場合、そこに課題がある可能性が高いと言えます。
属人化・教育コストを数値で把握する方法
属人化とは、特定の人しかできない業務が存在する状態です。引き継ぎにかかる時間や教育期間を数値化すると、属人化の影響が見えやすくなります。これにより、標準化やマニュアル整備の必要性が明確になります。
データと現場の課題感を照合して“本質課題”を特定
データだけ、現場の声だけでは不十分です。両者を照らし合わせることで、「なぜその数値になっているのか」という本質的な課題が見えてきます。これが核となる改善ポイントになります。
企業の課題感が曖昧になりやすい原因
企業の課題は、意識して整理しない限り、どうしても日々の業務に埋もれて自然と曖昧になっていきます。忙しさに追われる中で「何となく大変」「改善が必要そうだ」という感覚だけが残り、具体的な課題として言語化されないまま時間が過ぎてしまうのです。現場や組織で特に起こりやすい、課題感がぼやけてしまう原因には以下のようなものがあります。
業務が属人化していて見えない
業務の属人化が進んでいると、特定の担当者しか業務内容や進め方を把握していない状態になります。その結果、周囲からは業務の実態が見えにくくなり、問題があっても表面化しなくなってしまうのです。本人も「自分が頑張れば、この仕事は回る」と感じてしまい、課題として共有されないまま負担を抱え込んでしまうことがあります。属人化は、課題を隠してしまう大きな要因の一つなのです。
現場と管理側で認識のギャップがある
現場と管理側では、考える視点、見ている景色が大きく異なります。管理側は数字や報告資料をもとに判断する一方、現場は日々の細かい作業や、都度発生する目の前の業務の対応に追われています。そのため、管理側は「問題なく回っている」と考えていても、現場では「限界に近い状態」というケースも珍しくありません。この認識のギャップが埋まらないままでは、課題感が共有されず、改善の方向性も定まりにくくなります。
改善活動が“場当たり的”になっている
明確な課題整理がないまま改善活動を行うと、「とりあえずツールを入れる」「人を増やす」といった場当たり的な対応になりがちです。その結果、何を解決したかったのかが曖昧になり、施策の効果も検証できません。改善を重ねているつもりでも、同じ問題が繰り返される原因は、課題の定義が不十分なことにあります。
データが整理されていない・取れていない
課題を客観的に捉えるためには、最低限のデータが必要です。しかし、作業時間や業務量、ミス件数などが記録されていないと、議論はどうしても感覚論に寄ってしまいます。「忙しい」「大変だ」という声があっても、どの業務がどれくらい負担になっているのかがわからなければ、優先順位も決められません。データ不足は、課題感を曖昧にする大きな原因です。
企業の課題感を明確にするために使えるフレームワーク

企業の課題を明確化するうえで役立つのが、考え方を整理するためのフレームワークです。フレームワークを使うことで、個人の感覚や思い込みに左右されず、課題を構造的に捉えられるようになります。ここでは、現場改善から経営課題まで幅広く使える代表的な手法を、具体例とあわせて紹介します。
5Why(なぜなぜ分析)
5Whyは、問題に対して「なぜそれが起きているのか」を繰り返し問い、根本原因を探る手法です。名前の通り、一般的には5回程度「なぜ」を繰り返します。
たとえば「月末になると残業が増える」という問題があるとします。 なぜ残業が増えるのかを考えると、「請求書作成が集中するから」といった答えが出てきます。では、なぜ請求書作成が月末に集中するのか。理由を掘り下げると、「受注データの入力が遅れている」「入力作業が特定の人に集中している」といった背景が見えてきます。さらに深掘りすると、「業務手順が標準化されていない」「システムが使いにくい」といった、表に出にくい課題にたどり着くこともあります。
このように5Whyを使うことで、「残業が多い」という表面的な問題ではなく、「業務の属人化」や「業務フローの設計ミス」といった本質的な課題を明確にできます。
ECRS(排除・結合・変更・簡素化)
ECRSは、業務改善の視点を整理するフレームワークで、「排除(Eliminate)」「結合(Combine)」「変更(Rearrange)」「簡素化(Simplify)」の頭文字を取ったものです。主に業務のムダを見つける際に効果を発揮します。
たとえば、日報作成に時間がかかっているという課題がある場合を考えてみましょう。
まず「排除」の視点では、その日報自体が本当に必要か、読まれていない項目はないかを確認します。次に「結合」では、他の報告書とまとめられないかを検討します。「変更」では、記入のタイミングや方法を変えることで負担を減らせないかを考えます。そして「簡素化」では、自由記述を減らし、選択式にできないかといった見直しを行います。
ECRSを使うと、「忙しい」「時間がない」という曖昧な課題感が、「ムダな作業が残っている」「やり方が古い」といった具体的な改善ポイントに変わります。
SWOT分析
SWOT分析は、企業や部門の状況を「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4つに分けて整理するフレームワークです。現場改善というよりは、経営課題や中長期的な方向性を考える際に向いています。
たとえば、ある企業が売上低迷を課題としている場合、SWOT分析を行うことで、「顧客対応力が高い」という強みや、「特定業務が属人化している」という弱みが見えてくることがあります。また、市場の変化や競合の動きといった外部環境も整理できるため、単なる内部問題にとどまらず、全体的な課題感を把握できます。
SWOT分析のポイントは、抽象的な言葉で終わらせず、実際の業務や数字と結びつけて考えることです。そうすることで、戦略レベルの課題も現実的な形で明確化できます。
業務フロー図・業務分解図の活用
業務フロー図や業務分解図は、業務の流れや構造を図で表す手法です。文章や口頭では見えにくい課題を、視覚的に把握できるのが大きなメリットです。
たとえば、受注から納品までの流れを業務フロー図にすると、承認待ちで止まっている工程や、同じ情報を何度も入力している箇所が一目でわかります。業務分解図を使えば、一つの業務の中にどれだけ細かい作業が含まれているかを把握でき、「思っていた以上に負担が大きい業務」が浮かび上がります。
これらの図を関係者で共有することで、「ここが大変そう」「この工程はいらないのでは」といった共通認識が生まれ、課題感のズレを減らすことにもつながります。
企業の課題感を明確にするステップ(初心者向け)
企業の課題を明確化する作業は、いきなり高度な分析を行う必要はありません。大切なのは、順番を守って一つずつ整理していくことです。ここでは、初めて課題整理に取り組む方でも実践しやすいステップを解説します。
STEP1:業務の棚卸し
最初に行うべきは、現在行っている業務をすべて洗い出すことです。日常業務は当たり前になっているため、意識しないと見落としがちですが、「誰が」「どの作業を」「どれくらいの頻度で」行っているかを書き出していきます。この段階では、良し悪しを判断せず、事実を整理することに集中します。
STEP2:問題点の抽出
業務を棚卸しすると、時間がかかっている作業、担当者に負荷が集中している業務、ミスが起きやすい工程などが見えてきます。ここで初めて、「問題になりそうな点」を抽出します。重要なのは、課題を大きく捉えすぎないことです。「業務効率が悪い」ではなく、「請求書作成に想定以上の時間がかかっている」といった具体的な表現にします。
STEP3:現場ヒアリング
抽出した問題点について、実際に業務を行っている現場の声を確認します。管理側が想定していた原因と、現場が感じている理由が違うことは珍しくありません。現場ヒアリングを行うことで、机上の空論ではない、実態に即した課題整理が可能になります。
STEP4:データ分析
次に、現場の声をデータで裏付けます。作業時間、処理件数、ミスの発生頻度など、取れる範囲の数値で構いません。数値を見ることで、「どの課題が特に影響が大きいのか」を客観的に判断できます。感覚だけで進めないための重要なステップです。
STEP5:課題の優先順位を決める
最後に、すべての課題を同時に解決しようとせず、優先順位を決めます。影響範囲が広いもの、改善効果が出やすいものから着手することで、成功体験を積みやすくなります。この段階まで来て、初めて「企業として取り組むべき課題」が明確になります。
企業の課題感を明確にした後に行うべきこと
課題を明確化すること自体がゴールではありません。むしろ、ここからが本当のスタートです。課題をどう扱うかによって、その後の成果が大きく変わります。
課題の“再現性”を確認する
まず確認したいのは、その課題が一時的なものか、継続的に発生しているものかという点です。たまたま忙しかった時期の問題なのか、構造的な問題なのかを見極めることで、対策の重さも変わってきます。再現性のある課題こそ、優先的に取り組む価値があります。
改善計画を立てる
次に、課題に対して具体的な改善計画を立てます。「誰が」「いつまでに」「何をするのか」を明確にすることで、改善が進みやすくなります。このとき、完璧な計画を立てようとする必要はありません。実行できる現実的な内容であることが大切です。
小さく試して改善を繰り返す
改善施策は、最初から全社展開するのではなく、一部の部署や業務で試すのがおすすめです。小さく試すことで、想定外の問題にも気づきやすく、修正もしやすくなります。改善は一度で終わるものではなく、試行錯誤を重ねるプロセスです。
改善を定着させるための仕組みづくり
改善がうまくいったら、それを一時的なものに終わらせないことが重要です。マニュアルの更新やルール化、定期的な振り返りの場を設けるなど、仕組みとして定着させることで、同じ課題が繰り返されるのを防ぐことができます。
企業の課題感を明確にする方法は“現場とデータの可視化”が鍵
企業の課題感を明確にするうえで最も重要なのは、「現場」と「データ」の両方を可視化することです。どちらか一方だけでは、課題は偏った形でしか見えてきません。
曖昧な課題感を言語化するポイント
「忙しい」「大変だ」という言葉の裏には、必ず具体的な理由があります。それを作業内容や時間、回数といった形で言語化することで、初めて課題として扱えるようになります。言葉にすること自体が、課題明確化の第一歩です。
業務可視化とデータ分析の重要性
業務の流れを見える形にし、数値で裏付けることで、課題は誰が見ても理解できるものになります。これにより、担当者間や部署間での認識のズレが減り、改善に向けた合意形成もスムーズになります。
まずは小さく可視化から始めることが成功の近道
すべてを完璧に可視化しようとすると、途中で手が止まってしまいがちです。まずは一つの業務、一つの部署からで構いません。小さな可視化を積み重ねることで、企業全体の課題感は自然と明確になっていきます。企業の課題明確化は、特別なスキルが必要なものではありません。現場を見て、話を聞き、データを整理する。この基本を丁寧に積み重ねることが、改善やDXを成功に導く最も確実な方法です。

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