現場の業務には、目に見えないムダや非効率が数多く潜んでいます。これらを放置すると、作業時間やコストが膨らむだけでなく、社員の負担やストレスの増加、ひいては企業全体の競争力低下にもつながります。そこで役立つのが「業務効率化8原則」です。
業務効率化8原則は、無駄削減から生産性向上までを体系的に進めるための実践的フレームワークです。作業の標準化や自動化、情報共有の改善、レイアウトの最適化など、現場で即実行できる8つの視点を押さえることで、改善活動の効果を最大限に引き出せます。
本記事では、業務改善・業務効率化の全体像を解説した「業務改善・業務効率化の原則と目標を徹底解説!4原則・3要素・8原則を一挙紹介」の詳細解説編として、8原則の内容と実践方法をわかりやすく解説します。さらに、導入のステップや成功事例、定着させるためのポイントまで紹介し、読んだその日から現場で使えるヒントをお届けします。
業務効率化8原則の概要
業務効率化8原則とは、現場の無駄を削減し、生産性を高めるための方向性を8つの視点に整理した実践的なフレームワークです。業務改善を進める際、場当たり的に施策を導入すると効果が限定的になりがちですが、この8原則を基盤にすれば、改善活動を体系的かつ効果的に進められます。
この原則の特徴は、「何から手をつけるべきか」が明確になる点です。例えば、業務をスピードアップさせたい場合でも、その原因が作業方法にあるのか、情報共有の仕組みにあるのか、またはスキル不足にあるのかによってアプローチは変わります。8原則を理解しておくことで、現状分析から施策立案までの流れがスムーズになり、改善の効果を最大化できます。
さらに、業務効率化8原則は業種や企業規模を問わず応用可能です。製造現場ではレイアウトや動線の最適化が大きな効果を発揮し、オフィス業務では情報共有や自動化の活用が業務時間を大幅に削減します。8つの視点はそれぞれ独立して使える一方で、組み合わせることで相乗効果を生み出すのも大きな魅力です。
この後の章では、それぞれの原則の意味と具体的な実践例を紹介し、現場でどのように活かせるかを詳しく解説します。
業務効率化8原則①:作業の標準化
作業の標準化とは、業務の手順や方法を統一し、誰が担当しても同じ品質と結果を出せる状態をつくることです。業務効率化8原則の中でも、特に基盤となる重要な取り組みであり、他の改善施策の効果を最大化する土台となります。
標準化の目的と効果
標準化の目的は、業務の属人化を防ぎ、品質のばらつきをなくすことです。手順が人によって異なると、作業スピードや結果に差が出るだけでなく、引き継ぎや教育にも時間がかかります。標準化によって、誰でも同じ手順で作業できる状態になれば、効率化はもちろん、品質管理やミスの削減にもつながります。
実践方法の例
- マニュアル作成:文章や画像、動画を使って作業手順を明文化し、誰でも参照できる形にする。
- チェックリスト化:作業漏れを防ぐために、重要な工程をチェックリストにまとめる。
- テンプレート活用:メール文面や報告書の書式を統一して、作成時間を短縮する。
例えば、顧客対応メールの文章を統一すれば、経験の浅い社員でも一定の品質で対応が可能になります。製造業では、作業手順書を用意し、各工程を標準化することで、不良品率の低下や教育期間の短縮に成功した事例もあります。
標準化を進める際の注意点
標準化は「硬直化」につながらないように注意が必要です。現場の状況や顧客ニーズの変化に応じて、手順を柔軟に見直す仕組みを組み込むことが大切です。改善提案を受け入れる文化をつくり、標準化と改善のサイクルを回し続けることで、効率化効果が持続します。
標準化の取り組みについては、業務改善4原則とは?現場で活かせる具体例と実践ステップ で詳しく紹介しています。
業務効率化8原則②:ムダの排除
ムダの排除とは、業務の中で付加価値を生まない工程や時間、作業を徹底的に見つけ出し、削減することです。業務効率化8原則の中でも、効果が早く現れやすい取り組みのひとつであり、短期間で成果を出すための有効なアプローチです。
ムダが生まれる背景
日々の業務の中では、業務フローの複雑化や慣習化されたやり方が原因で、無意識のうちにムダが蓄積していきます。例えば、同じデータを複数システムに重複入力している、承認フローが過剰に多く時間を浪費している、会議が長時間にわたって行われるなどが代表例です。これらは一つひとつは小さく見えても、積み重なると大きな時間的・人的コストを生みます。
実践方法の例
- 業務フローの可視化:フローチャートや業務分解図を使って全体の流れを見える化し、どこにムダが潜んでいるか特定する。
- 二重作業の削減:入力作業や書類作成の重複をなくし、1回の作業で必要情報が揃う仕組みを作る。
- 承認プロセスの見直し:不要な承認ステップを減らし、迅速な意思決定を可能にする。
- 会議の効率化:目的とアジェンダを事前共有し、時間内に終わらせるルールを設定する。
成果が出やすい理由
ムダを排除すると、その分業務時間が直接的に削減されるため、効果を短期間で実感しやすくなります。また、余った時間やリソースを別の付加価値業務に充てられるため、生産性向上にも直結します。
注意点
ムダの排除は「必要な工程まで削る」リスクもあります。改善を行う際には、その作業が本当に不要なのか、品質や安全性への影響はないかを十分に検討することが重要です。現場の声を聞きながら、段階的に見直すことで、業務効率化と品質維持を両立できます。
業務効率化8原則③:自動化の活用
自動化の活用とは、定型作業や繰り返し行う業務をツールやシステムに任せ、人が行う作業を減らす取り組みです。業務効率化8原則の中でも、作業時間削減とミス防止の両面で大きな効果を発揮します。
自動化が必要とされる背景
多くの現場では、毎日似たような入力作業やデータ整理、帳票作成が繰り返されています。こうした業務は時間を消費するだけでなく、ヒューマンエラーの原因にもなります。自動化を導入すれば、人が手を動かす必要がなくなり、その分を分析や改善提案などの付加価値の高い業務に充てることができます。
実践方法の例
- RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション):データ入力やファイル整理、帳票作成などの繰り返し作業を自動化する。
- スクリプトやマクロ:ExcelやGoogleスプレッドシートでの集計・加工作業を自動化する。
- クラウドサービスの連携:業務アプリ間のデータ転送や通知を自動で行う仕組みを構築する(例:Zapier、Power Automate)。
- テンプレート生成ツール:契約書や見積書など、定型文書を自動生成するシステムを導入する。
導入効果
自動化を進めることで、作業時間の大幅削減、ヒューマンエラーの防止、作業品質の均一化が実現します。また、単純作業から解放された社員は、顧客対応や企画業務など、より戦略的な業務に集中できるようになります。
注意点
自動化は「現状のムダを含んだまま高速化する」危険もあります。導入前に業務プロセスを整理し、本当に必要な作業だけを自動化することが大切です。また、導入後は定期的にスクリプトや設定を見直し、環境や業務内容の変化に対応させる必要があります。
業務効率化8原則④:情報共有の効率化
情報共有の効率化とは、必要な情報を必要な人が、必要なタイミングで入手できるようにするための仕組みや運用ルールを整えることです。業務効率化8原則の中でも、部署間連携やミス防止に直結するため、早期に着手すべき分野のひとつです。
情報共有が非効率になる原因
多くの職場では、情報の所在が分散していたり、更新タイミングが不揃いだったりすることで、情報の検索や確認に余計な時間がかかっています。例えば、重要なデータがメールや個人のパソコンにしか保存されていない、共有フォルダの階層が複雑で目的のファイルにたどり着けない、リアルタイム更新されていない資料を元に業務が進められてしまう…といった状況です。これらは誤情報の伝達や作業のやり直しにつながります。
実践方法の例
- クラウドストレージの活用:Google Drive、Dropbox、Boxなどを利用し、ファイルの一元管理とアクセス権限の整理を行う。
- チャットツールの導入:SlackやMicrosoft Teamsを活用して、部門ごとのチャンネルを作成し、リアルタイムで情報を共有する。
- ドキュメントの統一ルール:ファイル名、フォルダ構造、バージョン管理のルールを決めて混乱を防ぐ。
- 進捗やタスクの可視化:Trello、Asana、Backlogなどのプロジェクト管理ツールでタスクや進捗を全員が見られる状態にする。
導入効果
情報共有を効率化すると、確認や探す時間が減り、意思決定のスピードが向上します。また、常に最新の情報に基づいて業務が進むため、ミスや二重作業の発生も減少します。特にテレワークや複数拠点での業務では、情報共有の効率化が生産性の維持に欠かせません。
注意点
ツールを導入しても、運用ルールが徹底されていなければ効果は半減します。共有範囲や更新頻度、責任者を明確にし、定期的にルールが守られているかをチェックすることが重要です。
業務効率化8原則⑤:レイアウト・動線の最適化
レイアウト・動線の最適化とは、作業環境や物品配置を見直し、必要なものに素早くアクセスできる状態をつくることです。業務効率化8原則の中でも、物理的な時間ロスを減らす即効性のある取り組みで、製造現場からオフィス業務まで幅広く活用できます。
なぜレイアウトや動線が重要なのか
作業場所や備品の配置が非効率だと、必要な道具や資料を取りに行くために何度も移動することになります。この移動時間は一見短く感じられますが、積み重なると大きなロスになります。さらに、動線が交差していると作業者同士が干渉し、作業スピードが落ちたり安全面でのリスクが高まったりします。
実践方法の例
- 作業頻度別の配置:使用頻度の高い道具や書類は手の届く範囲に置き、低頻度のものは離れた場所にまとめる。
- 動線の単純化:作業工程の流れに沿って物品や設備を配置し、無駄な往復をなくす。
- ゾーニング:作業内容ごとにスペースを区分けし、関連する備品や資料を集約する。
- デジタル動線の最適化:物理的なレイアウトだけでなく、デジタル上のフォルダ構造や画面遷移も整理する。
注意点
レイアウトや動線の改善は、現場で実際に作業している人の意見を反映することが不可欠です。管理者の視点だけで変更すると、かえって不便になり効率が落ちることがあります。また、改善後も定期的に見直し、業務内容や人員配置の変化に応じて調整することが重要です。
業務効率化8原則⑥:スキル向上
スキル向上は、業務効率化8原則の中でも長期的な効果をもたらす重要な要素です。どれだけ業務フローやツールを整えても、実際にそれを使いこなす人材の能力が不足していれば、効率化の成果は限定的になります。逆に、高いスキルを持つ社員が増えることで、現場は自律的に改善を進められるようになります。
なぜスキル向上が重要なのか
- 作業スピードと正確性の向上:業務に精通している人は、迷いやミスが減り、作業時間が短縮されます。
- 新しいツール・手法の適応力:スキルが高いほど、新しいツールやシステムを短期間で習得でき、効率化施策をすぐに実践に移せます。
- 改善提案の質の向上:現場に知識と経験がある人が多いほど、実用的で効果的な改善案が出やすくなります。
実践方法の例
- 定期的な研修・ワークショップ:新しい業務ツールの操作方法や効率化の事例を共有。
- OJT(On-the-Job Training):現場での実務を通じてスキルを習得し、その場で改善ポイントも学ぶ。
- 資格取得支援制度:業務に関連する資格やスキル習得を会社がサポートすることで、学習意欲を高める。
- 社内勉強会の開催:他部署や同僚の知識・ノウハウを共有する場を定期的に設ける。
注意点
スキル向上は一度きりの研修で終わらせないことが大切です。業務内容や使用ツールは常に変化するため、継続的な学習の仕組みを整える必要があります。また、研修内容は現場の課題に直結した実践的なものであるほど効果が高まります。
業務効率化8原則⑦:業務の優先順位付け
効率化の取り組みを最大限に活かすには、業務の優先順位付けが欠かせません。重要度や緊急度が異なる業務を、同じように処理しようとすると、時間とリソースが分散し、結果的に成果が出にくくなります。優先順位を明確にすることで、限られた時間で最大の成果を得ることが可能になります。
なぜ優先順位付けが重要なのか
- 生産性の最大化:限られた時間を最も重要な業務に集中できる。
- 期限遅延の防止:重要なタスクが後回しになり、納期に遅れるリスクを減らせる。
- 精神的負担の軽減:何から手を付けるべきかが明確になるため、迷いによるストレスが減る。
実践方法の例
- 緊急度×重要度マトリクス(アイゼンハワー・マトリクス)
業務を「緊急かつ重要」「緊急ではないが重要」「緊急だが重要でない」「緊急でも重要でもない」の4象限に分類して処理順を決める。 - タスク管理ツールの活用
AsanaやTrello、Notionなどを活用し、業務を可視化して優先度を設定する。 - 1日の最重要タスクを3つまで絞る
毎朝、最も価値の高いタスクを3つ選び、その達成を第一目標とする。 - 時間帯別の作業割り当て
集中力の高い時間帯に重要タスクを、低い時間帯にルーチン作業を配置する。
注意点
優先順位付けは状況によって変動するため、一度決めたら終わりではなく、定期的に見直す必要があります。また、優先度が低い業務でも、完全に放置すると後に大きな問題になる場合があるため、期限や条件を設定して計画的に処理することが大切です。
業務効率化8原則⑧:改善の継続
業務効率化は、一度の改革で完結するものではなく、継続的な改善が不可欠です。環境や市場の変化、社内の体制変更などに応じて、効率化の取り組みも常に見直す必要があります。改善を止めてしまうと、すぐに元の非効率な状態に戻ってしまうリスクが高まります。
なぜ継続が必要なのか
- 環境の変化に適応できる:市場や顧客ニーズの変化に柔軟に対応できる。
- 成果を積み重ねられる:小さな改善を積み重ねることで大きな効果につながる。
- 組織文化の定着:改善を日常業務の一部として習慣化できる。
実践方法の例
- 定期的な業務レビュー
月1回・四半期ごとなどのペースで業務フローや成果を確認し、改善点を洗い出す。 - 改善報告会の開催
部署単位で成功事例や課題を共有し、他部署でも活用できる知見を広げる。 - KPIや指標の更新
取り組みの効果を数値で把握し、必要に応じて目標や基準を見直す。 - 小規模な改善サイクルの継続
「PDCAサイクル」や「OODAループ」を活用し、短期間で試行と修正を繰り返す。
注意点
改善の継続は「義務」ではなく「習慣」にすることが大切です。形式だけの見直しや、成果が出ていない施策を惰性で続けることは逆効果になります。成果の有無を評価し、必要な場合は思い切って方法を変える柔軟性も必要です。
改善の継続を成功させるには、目標設定が鍵となります。業務効率化の目標設定完全ガイド!SMART法・KPI/KGI・指標例まで徹底解説をご覧ください。
業務効率化8原則を活用する手順
1. 業務分析の実施
効率化の第一歩は、現状の業務を細かく把握することです。作業内容や担当者、所要時間、使用するツールなどをすべて洗い出し、フロー図や一覧表にまとめて可視化します。これにより、どこに無駄や重複があるのか、改善の余地がどこにあるのかを客観的に確認できます。
2. 優先度の設定
改善策は一度にすべて実行するのではなく、効果が大きく、かつ短期間で実現できるものから取り組みます。緊急性・重要度・実行可能性といった観点で優先順位を付けることで、効率よく成果を出せます。
3. 改善施策の実行と検証
まずは小規模な改善から試行します。実行後は必ず効果を数値や現場の声で確認し、必要に応じて修正します。改善案を一方的に押し付けるのではなく、現場スタッフの意見や提案を積極的に取り入れることで、施策の定着率と満足度が高まります。
業務効率化8原則を定着させるポイント
1. 小さな改善から着手する
いきなり大規模な改革を行うよりも、まずは現場で即実行できる小さな改善から始める方が効果的です。日々の業務の中で「この手順を省けないか」「この書類のやり取りを簡略化できないか」といった身近な課題に取り組むことで、社員の負担を減らしながら自然に改善文化を根付かせられます。
2. 継続的な評価と改善
改善は一度きりではなく、定期的な評価と見直しが不可欠です。施策の効果を数値や現場の声で検証し、必要に応じて修正を加えることで、業務効率化8原則を「形だけ」で終わらせず、継続的な成長につなげられます。改善の進捗や成果を社内で共有する仕組みを作れば、社員のモチベーションも維持しやすくなります。
業務効率化8原則を活用しよう
業務効率化8原則は、単なる作業効率の改善にとどまらず、組織全体の生産性や働きやすさを底上げするための強力なフレームワークです。「小さな改善から始める」「継続的に評価・修正を行う」という基本姿勢を持ち続ければ、どのような業種・職種でも着実に効果を実感できます。重要なのは、改善を一過性のプロジェクトではなく、日常業務の一部として定着させることです。
もし自社で「どこから業務効率化に着手すべきかわからない」「施策が定着しない」という課題を感じているなら、専門家のサポートを受けるのが近道です。
mayclassでは、現場の実態に合わせた業務分析から、8原則に基づく改善施策の設計・実行支援までをワンストップで提供しています。
まずはお気軽にお問い合わせください。

▼こちらの記事もおすすめ▼
業務効率化は“数値化”から始まる!成果を見える化する方法と実践ステップ